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2020年7月31日 (金)

鏡のなかに父を見た

 父は面長でいわゆる醤油顔であり、目鼻立ちはくっきりして、少しつり目で、ひいき目に見ればまあまあ男前と言ってよい。身長も高く、筋肉質だった。それに対し母は四角い顔で、色白ではあるけれど、ひいき目に見ても美人とは言いがたい。理知的な顔だからときに冷たいと勘違いされることもあるが、じつは人なつっこく、誰とも友達になれる。

 

 弟は父の顔を受け継ぎ、しかも運動神経もよかったから、高校時代などは女の子にモテモテだったし、おしゃれだった。私は母に似て四角い顔で、運動が苦手、女の子にもてた記憶はない。兄弟でもずいぶん違うものである。

 

 最近、鏡を眺めていたら、そこに父の顔らしきものが見えて驚いた。似ても似つかなかったはずの父の顔が、私の顔の中に潜んでいたのだろうか。

 

 父を乗り越えるのに一人でもがき続けて、ずっと父との関係はギクシャクしていた。いわゆるファーザーコンプレックスというものかもしれない。ある日父との壁が雲散霧消しているのに気がついたのは、息子が生まれた少し後のことだった。父はとっくに乗り越えるべき対象ではなくなっていたのだ。そのあとは私なりに父との幸せな関係を維持できたのはありがたいことだった。父も嬉しかっただろうことがいまなら分かる。

 

 私が鏡のなかに見たのはその頃の父の顔であった。思えば息子が生まれたのは父が七十になるかならずで、まさに私のいまと同じ頃なのである。

 

 私が男手一つで息子と娘を育てるようなことになって、母がしばしば面倒を見に名古屋まで来てくれたが、何回かに一回は父も一緒に来た。そういうときは二人で名古屋を起点にあちこち旅行に行ったり、私たちも一緒に車で温泉などに遠出をしたことがなつかしい。
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コメント

私も最近鏡の中に母を見ます。
姉と弟は姉弟とすぐわかるのに・・・私は似ていないから、
「拾われた子だ。」と揶揄われていました。
年を取ってきて、段々母の面影が私の中に出てきています。

マーチャン様
年寄りの顔か似てしまうところはあるのかもしれないのですが、はっきりと父がそこにいる、と感じられたのが自分ながら不思議に思えたので、こんなブログを書きました。
そういえば母は祖父に似て祖母とは似ていませんでした。
祖母は瓜実顔の美人だったのですが、母は祖母に似ていないことを嘆いていたのに、晩年はなんとなく私のよく知る祖母に似て見えたことを思い出します。

なかなかじっくりと自分の顔を見ることがありません。見るに値しない顔ですから見たくも
ありませんが・・・(( ´艸`)
従って、自分では両親のどちらに似ているのやら?でもある日・・・妹たちから言われ
ましたね、背中や歩き方が父にそっくりだと・・・やはり自分では似ていないと思っても
人様がみれば、妹などがみれば・・・似ているのでしょうね。

でんでん大将様
じっくり見れば、鏡のなかにあるのは自分の顔でしかありませんが、ぼんやり見るから、ふとそこに父の顔が見えたということのようです。
父の声と弟の声、母の声と妹の声が電話で聞くとよく似ているのに気がついたりします。
話し方も似ているからかもしれません。
それが家族というものでしょうか。

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