寝た子を起こす
力が強大な国は、理不尽な行動をしても他国に咎められない。咎めるにはさらに強大な力が必要だからだ。力とは経済力であり、軍事力のことである。そういう強大な国が覇権主義的な行動に走ったという例は、歴史を見れば枚挙にいとまがない。というよりも強大になるとそのまま覇権主義に走るのが普通に見えさえする。
中国の歴史はまさにそのようであった。自らがその覇権主義で膨張したり、異民族の覇権主義によって国を奪われたりしてきた。共産主義国家として、第二次世界大戦後に新たに建国された中華人民共和国は、建国当初からその覇権主義を密かに懐に抱いていたことはチベット、モンゴルでの行動を見れば明らかである。しかしそれらは他国に咎められなかった。
まだ中国が強大な国ではないと見なされたし、咎められればおとなしくて見せたからだ。それが21世紀に入ってから、その隠していた爪をむき出しにし始めた。気がついてみればアメリカ以外に中国を咎める力を持つ国は存在しなくなっていた。そのアメリカはますます衰退し、中国はますます強大になりそうな気配である。
その傍若無人な行動を見せられていると、私にはあたかも日清戦争以後の日本が行ってきた行動に似ているように見えて来た。咎められるまで暴走していって、挙げ句の果てに自滅の戦争に追い込まれた。日本は太平洋戦争後、占領軍に統治された。つまり国は一度滅びたのである。国民は同じだから連続しているように見えるけれど、一度滅びたのだ、という自覚を持つべきなのに、そんなこと思いもよらず、どうして戦争が起きてしまったのか教育もしないから、日本人は日本国民であるという自覚など持ちようがない。
そんなことを考えて、日清戦争以後の日本の行動といまの中国の行動を対比させながら歴史を振り返ろうと思って、いろいろ資料を読み始めたら、近現代史を一から読み直さないと何も始まらないことを思い知らされた。
大学生になって、まず始めたのが歴史を学び直すことだった。なぜ日本は勝てそうもない戦争を始めてしまったのか。それを知りたいと思わない日本人がいることが信じられないけれど、それが普通らしい。そのときは歴史を遡りすぎ、しかも横道にそれて中国史にのめり込んでしまった。
今度改めて近現代史をひもときながら、現実に進行する中国とアメリカ、そしてその取り巻きの国の現実の展開を眺めようかと思っている。歴史は学んでも奥が深すぎるし、見方でガラリと様相も変わって見える。そのことが興味深く根そして面白い。どうも寝た子を起こしてしまったようだ。
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おはようございます。
いつも読み応えのある記事で、楽しみにしています。
最近の中国の覇権主義は、世界の平和を危うくしていますね。
そして、それに対するアメリカが、トランプ大統領ってところも心配だったりします。
それはさておき、最近文庫化された、「昭和16年夏の敗戦」、かなり正確に開戦から3~4年での敗戦を予測していたのに開戦へと突き進んだ政府。
まだ未読ですが興味があったりします。
過去の歴史から学ぶべきことは多いです。米中対立が大きくならないことを願うしかないですが。
また訪問させて頂きます。m(__)m
投稿: ハル | 2020年7月26日 (日) 09時16分
ハル様
中国もアメリカも引き戻すことの出来ないところまで踏み込んでしまったような気がします。
どうなるのか歴史を振り返りながら傍観するしかないですね。
多分これから起こることは経済の衰退で、生活は貧しくなるのに物価が上がるという事態に耐えなければならなくなっていくだろうと思います。
『昭和十六年夏の敗戦』は猪瀬直樹の本のようですね。
私は太平洋戦争開戦前夜から日本の敗戦までについてアメリカの情報将校だったジョン・トーランドという人の書いた『大日本帝国の興亡』全五巻を、あの戦争を考える上でのベースにしています。
ずいぶん昔に読んだので、読み直す必要があるかもしれません。
投稿: OKCHAN | 2020年7月26日 (日) 11時08分