姫川温泉
糸魚川を散策した晩は、姫川温泉に泊まった。名前の通り、姫川沿いにあるひなびた温泉で、姫川に沿う国道148号線から近い。国道148号線は糸魚川から姫川、小谷村(おたりむら)それを過ぎると147号線になり、大町、松本へといたる。
小谷村から長野県になるのだが、少し手前の姫川を渡った姫川温泉は、長野県に属する。宿の女将さんが、天気予報は長野県と新潟県の両方を見ないとわからない、といっていた。
宿の部屋から姫川と大糸線を見ることが出来る。ふだんは姫川は澄んでいるが雨が降ったので濁っている。対岸は新潟県になる。
この姫川温泉には十年ほとど前に泊まったことがある。この宿は五階建てで五十部屋以上ある。前回は仲居さんもいて宿の料理人もいたのに、ほとんど宿泊客がいないからだろう、板前も仲居も見当たらず、ひっそりしている。玄関では廃業の気配を感じさせた。姫川温泉は湯量も豊富だし、源泉は60℃以上あって加水加温なしの掛け流し名のだが、カランの半分はシャワーがない。一人で静かに滞在するのには好いけれど、夜は静かすぎてひんやりしている。
食事はそこそこだけれど、仕出しのものと宿で作っているものが混在していて、焼き魚などは冷たくなって硬くてみぞりにくくてこまった。わびしい。これは宿のせいではないのだけれど。
部屋は一人で十畳敷きを占領している。
人静かにして魚自ずから躍る。風定まりて荷さらに香る。
と読むのだろうか。荷とは中国では蓮のことである。緑雨は斉藤緑雨のことか。明治時代の文筆家である。
落款があるから真筆ということなのだろう。
翌朝も雨。南の小谷村の方を見ても上がる気配はない。ゆっくり湯に浸かってからどこにも寄らずに自宅へ帰った。
以上で今回の小旅行は終わり。
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