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2021年12月14日 (火)

浅田次郎『天子蒙塵 第一巻』(講談社)

 満州国成立前後の時代が、さまざまな人の立場から描き出されていく。第一巻のほとんどは、愛新覚羅溥儀つまりラストエンペラー、の皇妃・文繍の述懐が占める。皇妃とは皇后ではない。溥儀の皇后は婉容である。婉容は時代の流れが理解できず、麻薬中毒となって悲惨な生き方をする。ラストエンペラーでもそれが描かれていた。文繍は自らの意志で溥儀との婚姻を解消した。つまり皇帝の皇妃でありながら離婚を成し遂げた。

 

 その結婚から離婚にかけての経緯を語りながら、そのまま清の滅亡後の清朝の残影を語ることになる。そこには『蒼穹の昴』の主人公であるあの春児(チュンル)も年老いた姿で登場する。話のなかには梁文秀まで登場するのだ。梁文秀は第二巻では満州国の執政となった溥儀の側近として登場する。

 

 文繍の語る清朝の残影には西太后の影が色濃くかかっている。そしてその理由についてはこのシリーズを読んでいる人には自明のことであろう。天命であり、それを象徴するものがこの長い長い物語の芯を貫いているのだ。そしてそれが張作霖を爆死させ、張学良を東北の覇権から去る決心をさせるのだ。

 

 運命と人の意志、それがあざなえる縄の如く互いに絡み合いながら歴史を紡いでいく。そのことを感じさせながら物語は展開していく。

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