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2021年12月 8日 (水)

デフレマインド

 高坂正堯氏の『現代史の中で考える』を読み始めていろいろなことを考えている。考えるばかりでちっとも読み進まないが。冒頭でロンドン万国博のことが書かれていて、産業革命を真っ先に成功させたイギリスが、どうして重工業でドイツなどに追い越されていったのか、そのことについて考えている。それが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまでいわれた日本の停滞または衰退の原因と似ているように思うからだ。

 

 たぶん高校時代だったと思うけれど、なぜ敗戦国の日本やドイツの製造業が大いなる復興を遂げたのに、戦勝国の産業はそれに後れを取ったのか、教えてもらった。それは国土が焦土と化し、ほとんど全ての工場が消滅してしまったからだという。そのために日本もドイツも歯を食いしばって最新技術の最新設備を作ることになった。それに対してアメリカなどの戦勝国は、古い工場が生きているからそれを稼働させていた。とうぜん生産性も品質も著しくちがうことになり、たちまち日本もドイツも復興を成し遂げていったというのだ。

 

 もちろん敗戦国なら必ず先んじることが出来るのではなく、投資を行う意欲がなければ敗戦国は最貧国のままであることは、論を待たない。アメリカの製造業は日本を恨み、ずいぶん理不尽な制裁を加えてきたけれど、自国の製造業を保護することによって却って製造業を衰退させていった。それでもアメリカは基軸通貨を持つ国として、金融で稼ぐという方策をとり、豊かさを維持することが出来た。他の国にはけっしてできないことである。

 
 場合によって、まだ使える設備を廃棄して最新の設備に換える必要がある。それが設備投資である。日本は設備投資を怠った。怠り続けた。設備投資だけではない、人的投資も怠り続けた。最先端の技術を持つ人材が容易に韓国や中国にヘッドハンティングされていくのを現役時代に数多く見た。優秀な人間ほど設備投資に意欲的で、経営者に提案するが、無能な経営者はそれを煙たがり、優秀な人ほど会社にいづらくなって辞めていった。イエスマンばかりが経営者の周りに残った。

 

 韓国や中国は日本よりも最新の設備や技術を導入し、投資し、次々に日本を追い越していった。人的投資も行っていった。日本はひたすらコストダウンでそれらの国と競争しようとして、投資はしないままあろうことか人件費を削り、優秀な人間を手放した。経営者がおろかだったから、コストダウンは経費節減であると思い込み、企業を衰退させていったのだ。

 

 テレビで観ていると、ものの値段が上がることは悪だ、というプロパガンダがマスコミによって繰り返されている。こうして日本の産業は停滞し、衰退し、賃金は上がらず、将来に希望を失って人口減少を加速させている。

 

 デフレマインドとはそういう代物で、それを打破しない限り日本の未来は開けないだろうなあ、と思う。しかし、もうそれが染みついてしまって取り返しがつかない国になっているような気がして私は悲観的だ。もう日本には気概のある若者を育てる企業も風土も失われてしまった。そもそも経営者に気概のある者が見当たらないらしいのは、のべつテレビのニュースで頭を下げている愚かな経営者ばかり見せられていることでよくわかるではないか。正直うんざりしている。

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コメント

おはようございます
今回は私の駄文を見ていただきありがとうございます。
パソナの竹中平蔵なんかを見ていると「ああ、ああいう手合いが日本の経済や産業をダメにしたのだな」と思わされます。確かに新興国と競争するにはコスト削減が必要だということがわかりますが、彼は日本の産業は内需で補われていることを知ってかしらずか、その消費を担う若者層から金を削るという過ちを犯したと思います。
こういった”政商”まがいの連中が日本をダメにしていると思うとはがゆくなります。
では、
shinzei拝

shinzei様
竹中平蔵氏は経済合理性に基づく判断力については極めてすぐれた人で、だから論理的整合性があり、説得力もあります。
しかし経済的合理性至上主義が世界をどのように変えてしまったのか、それを見る能力に欠けています。
それを論破できるだけの知性が現れてきていますが、日本人の多くはそのことに気がついていません。
特にマスコミのひどさは目を覆うものがあります。
バカをおだて上げてバカにしたつもりの、自らの愚かさを恥とせず感じてもいません。
そもそも大衆はバカだと見下しているからでしょう。
大宅壮一の言う一億総白痴化はすでに達成されて久しいようです。
当分日本の衰退はとどまることがなさそうです。

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