『芥川竜之介随筆集』(岩波文庫)
今回読んで感じたのは、芥川竜之介の小説は面白いけれど、この随筆集に収められているような文章はあまり好きにはなれないということだった。ことさら文章中に横文字(カナカナではなく、文字通りの横文字)が多用されたり、私の知らないことばが頻出する。この随筆集を編纂した石割透という人が註をいれているはずだが、その註が、必要以上にわかりきっていることが書かれているのに一般的ではなくてわからないことについては註がないので、不親切に感じてしまう。岩波の注釈にはそんなのが多い。もちろん私に素養がないのではあるが、そういう人のための註のはずだと恨めしい。
警句的で衒学的というのは、こちらがついて行けているときはそれなりに面白がれるが、突き放されてしまうととりつく島がない。素晴らしい美文もすらすらと書かれているが、芥川竜之介は才が走りすぎているように感じてしまう。この辺は好みの問題もあるだろう。志賀直哉の随筆と較べると親しみやすさがまったく違った。ただし芥川竜之介の小説は何度読んでも面白く読めるし、嫌いではない。
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