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2022年6月 9日 (木)

平岩弓枝『狐の嫁入り』(文春文庫)

 神林東吾は奉行所与力の神林通之進の弟。幕末の剣客で有名な齋藤弥九郎の弟弟子で、後に齋藤弥九郎道場の筆頭門弟格となる。つまり凄腕なのである。神林通之進夫婦にはこどもがなく、順当であれば東吾がそのあとを継ぐことになる。

 

 るいはもともと同心の庄司家の娘だったが、父の死後遠戚に同心株を譲り、御宿かわせみの女主人となる。女中頭のお吉や番頭の嘉助はもともと庄司家に仕えていた者たちである。また畝源三郎は神林家の隣家の同心で、るい、源三郎、東吾は幼なじみである。

 

 与力の神林通之進の妻、早苗は麻生家から来ていて、その麻生家は娘ばかり、二人の娘は他家に嫁ぎ、残った七重が婿を取って家を継ぐことになっているが、当主源右衛門は七重が東吾を慕っていることを知って居るので、東吾を婿にとりたい。

 

 るいと東吾は幼い頃から慕いあう仲で、すでに事実上夫婦同然なのだが、そういう背景があってなかなか思い通りにはならずに切ないのである。畝源三郎は東吾の親友でもあり、しばしば東吾の腕と知恵を借りるために捕り物にかり出す。そうして出会う事件の顛末が、この捕物帖となっている。

 

 東吾の周辺も色々と騒がしくなり、読者も気になるし、堅物の畝源三郎の去就も気になるところである。

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