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2022年7月29日 (金)

どうせ読まないし、知らない

 大下容子ワイド!スクランブルという昼のバラエティニュース(ほかの局よりは多少マシ)で、プーチンがトルストイの『戦争と平和』が愛読書であると公言し、感銘を受け、影響を受けたと述べたことが取り上げられていた。

 

 ロシアの専門家は、トルストイは(ドストエフスキィも)戦争は悲惨なもので愚かなものだという考えの持ち主であり、プーチンはただ、ナポレオンがロシアに攻め込んだけれど、ロシアはそれを撃退した、ということについて書いてあるところだけを取り上げただけで、実際に読んでいて愛読書なら、彼の考えとまるで違うことがわかるはずで、たぶん読んでいないだろうと説明していた。

 

 ロシア人の何人が『戦争と平和』を実際に読んでいるだろうか。本当に一握りだろう。日本と変わりはしない。むかしは日本や世界の文学全集を本棚に並べるのが流行だったが、そのときにでさえ実際にこの本を読んだ人はほとんどいないと思う。今ならそれよりさらに少ないはずだ。それはそれで仕方のないことだ。私は曲がりなりにも学生時代に苦心惨憺して読んだことは読んだが、登場人物が多すぎるし、名前がややこしいし、長すぎて本当に往生した。そしてほとんど内容は覚えていない。あとで映画を観て、「違う!」と思っただけだ。

 

 そんなことはどうでもいい。問題なのは、そのとき司会役の大下容子がコメンテーターたちにプーチンのその「戦争と平和」が愛読書であると言っていることをどう思うか、と問うているのがコメディとしか見えなかったということだ。誰も読んでいないことは歴然としていて、知らないことについてコメントを求められても答えようがないのを互いに承知で、なんだか知ったかぶりのやりとりをしている。バカみたいだ。

 

 プーチンは「戦争と平和」を読んでいない。そしてそれを偉そうに愛読書と言われても、ロシア人で「戦争と平和」を読んでいる人はほとんどいないだろうし、では「戦争と平和」を読んでみようか、などと思う人間もまずいないであろう。戦意高揚の本なのだろう、くらいにしか思わないだろう。しからば「戦争と平和」が戦争の悲惨さをこれでもかと書きこんであることなど、だれも知らないままである。世のなかいつもこんなものか、と思った。知らなければ知らないでいいけれど、知らないことの自覚くらいは持たないとね。

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは
ある統計によれば世界で一番本を読むのはロシア人だそうです。信じられない話ですが・・・。
ちなみに日本人は3位だそうで、逆に読まないのは韓国人と中国人だということです。私も経験ありますがハングルや簡体字は読みづらいですから頷けますね・・・。
では、
shinzei拝

shinzei様
ロシア人が最も本を読むというのは意外でした。
本を読むには忍耐がいることがありますし、ロシア人は忍耐強いですから、そうなのかもしれませんね。
もともと本を読む人と読まない人は極端に別れるようですから、ロシア人でも読む人もいれば、全く読まない人もいるでしょう。
日本人もそうですね。
韓国や中国人は、本を読むのは特殊な人が目的があって読むもの、と思い込んでいるから、娯楽で読むという習慣がないのかもしれません。

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