書
川端康成が、書家の榊莫山の言葉を引用していた。これはもともと金沢出身の作家、室生犀星が書いていた言葉を卓説として紹介したもののようである。
文字は六十くらいになると拙くとも、拙いなりなりに完成して、どんな人でも文字というものが書けるようになるものである。文字が一人前に書けるころには、死が訪れてくる。たいていの人間は、死ぬちょっと前には、字らしいものが書けるようになるのである。字の恐ろしさがこれでもわかるのだ。
筆墨で字を書くことがなくなって何十年になる。書きたい気持ちは常にあって、道具も手本も用意してある。名筆のつたない臨書でいいから書いてみたい気がしてきた。書きまくっているうちに、字らしい字になることもあるだろうか。
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