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2022年7月 3日 (日)

『魯迅文集 6』

 竹内好の『魯迅文集』(ちくま文庫)は全六巻で、今回読んだのが最終巻である。第一巻が小説、第二巻が随筆、第三巻以降は評論が収められている。この第六巻は魯迅が晩年に書いたもの、そして論争の文章である。魯迅は論争好きで、批判の筋が通っていないものや、理解不足で誤解されたり、悪意が含まれたものに対しては徹底的に反論した。しかも繰り返し執念深く追求するから、よほどの覚悟がないと立ち向かえない。日本人だと森鴎外あたりのしつこさだろうが、それをはるかにしのぐ。それに森鴎外はいちゃもんに近いところがあって(このことは、谷沢栄一に教えられた)、魯迅には論理性でもかなわない。

 

 論争は部外者として読めば楽しい。ただし、楽しむためにはいつどのような時期にどのようなメディアで発表された文章なのか、その意図と魯迅の怒りの理由がわからないといけない。さいわい竹内好はその点で初出の明示、そして注釈を漏らさず、理解が可能になっている。

 

 小説と違って、作家の随筆や評論は、その人物や考えを知るために読むところもあって、その点がとても大事で、それが不十分であってはならない。いま読んだり読み終えたりしている随筆集や評論はたいてい問題ないが、『藤村随筆集』(岩波文庫)は残念ながら編集が時系列に沿わないのに、初出がわかりにくく、著者がどういう背景でその文章を書いたのか判然としない。

 

 先般、そこに収められた『言葉の術』という小文について、思ったことをまとめようとしたが、それが明治時代に書かれたのか、昭和時代に書かれたのかわからないので、まとめられずにいる。ある部分を、言文一致についての島崎藤村の考えとして受け止めたけれど、まったく違うのかもしれないのだ。よく調べたからいまはわかったが、こういう不親切は欠陥であろう。

 

 ところで『魯迅文集』は第一巻とこの第六巻しか読了していないので、読みかけの第二巻を継続して読み、合わせて今度第三巻を読み始める。ちょっとした理由があるのだが、どうでもいいことなので書かない。

1803-172_20220702173301紹興の魯迅記念館にて

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