大沢在昌『冬の狩人』(幻冬舎)
日本のハードボイルド作家といえば、わたしは北方謙三、大沢在昌、馳星周の三人を代表として挙げたい。大方は賛同するはずだ。もちろんその前にもいるし、そのあとに続く者もいる。この三人の本をずいぶん読んできた。店頭で見かけるとつい買ってしまったものだ。最近は本屋に行かないから、未読の本が少しだけ残っている状態だ。
その一冊が今回読んだこの本で、『北の狩人』、『砂の狩人』、『黒の狩人』に続くシリーズの新作だ。大沢在昌といえば『新宿鮫』シリーズが有名だか、この『冬の狩人』にチラリと鮫島の行きつけだったバーがでてくる。こちらの主人公の佐江警部補も新宿署だから、ニアミスがあってもおかしくはないのだ。ファンを喜ばせてくれるではないか。
三年前、地方都市で起きた殺人事件で行方をくらましたままだった女性から、出頭の意思を示す電話か入る。ただしそれには条件かあり、新宿署の佐江の同行を求めたのだ。佐江には全く心当たりがなく、その理由がわからない。その女性に翻弄される警察、その目的はなにか。その地方都市にある巨大企業をめぐるさまざまな暗黒面が浮かび上がり、ヤクザ組織とのつながりが明らかになる。さらにその企業を買収しようとする中国の会社の関与が判明して、三つ巴の様相となる。そもそもの殺人事件の動機はなにか、そして犯人は誰なのか。
今回もクールな佐江警部補の活躍を大いに楽しむことが出来た。それにしても六百ページ近くあるので読了するのにまた半ば徹夜になってしまった。次に読むつもりなのは『夜光虫』という台湾が舞台の馳星周の本だが、こちらは文庫本とはいえ八百ページを超える。そうそう徹夜も出来ないから、ちょっと間隔を置くことにしようかな。
« 今年は無理だが | トップページ | いかばかりの悲しみか »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 検閲(2024.09.25)
- 『パイプのけむり』(2024.09.13)
- 戦争に当てる光(2024.09.06)
- ことばと文字(2024.09.05)
- 気持ちに波風が立つような(2024.09.02)
コメント