『魯迅文集2』(筑摩書房)
魯迅文集は全六巻。ちくま文庫になっているが、ネットで取り寄せて揃えたとき、どういうわけか第二巻だけが大判の単行本を取り寄せてしまった。だから本棚ではちぐはぐになっている。
魯迅(ろじん 1881-1936)は浙江省紹興生まれの作家。本名は周樹人。弟に作家の周作人がいる。彼の生家の跡に建っている記念館を訪ねたことがある。
魯迅は日本に留学して、仙台の医専に入学した。現在の東北大学医学部である。しかし学半ばで帰国、啓蒙的作家活動に入る。中国人の覚醒を促す『狂人日記』や『阿Q正伝』が代表作。これは全集の第一巻(小説集)に収められている。
この第二巻には散文詩的な『野草』、自伝的回想の『朝花夕拾』、そして神話・伝説・古代史を題材にした『故事新編』が収められている。全六巻を読了していないが、たぶんこの巻が最も読み応えがあると予感していた。
『朝歌夕拾』に収められている『藤野先生』という短文は仙台医専時代の恩師のことを書いたもので、特に知られている。いつの時代にも、どこにも必ず藤野先生のようなこころある人がいる。そのことがこの世の救いである。
『故事新編』は苦みの強い寓意に満ちた短編集だが、神話らしい神話がないという中国の神話について、学生時代に『中国史』の講座を受講してレポートしたことがあって、懐かしい。伊藤清司『中国の神話・伝説』(東方書店)という本を脇に置いて参考にしながら楽しんだ。
期待通りのいい本であった。また読み直したい本だ。
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