馳星周『暗手』(角川書店)
『夜光虫』の続編にあたる。前作が台湾が舞台の野球賭博の話だったが、こちらはイタリアが舞台のサッカー賭博の話である。
プロローグに
欲望に身を任せた。
嘘をつき、それを糊塗するためにさらに嘘をついた。
糊塗しきれなくなると、殺した。
嘘をついてまで手に入れたかった女に愛想を尽かされた。家族に捨てられた。
さらに殺した。
顔を変えた。名前を変えた。
そして殺した。
殺した。殺した。殺した。
殺しすぎて台湾にいられなくなった。
そしておれは今、イタリアにいる。
すべての感情を失い、味覚を失い、欲望を失い、生きる意味を失った主人公が仕掛けるサッカー賭博の罠。しかしある女性に出会うことで主人公の中で業火が目覚める。中国人民解放軍特殊部隊出身の凄腕の殺し屋か迫る。暗黒街の男たちとの暗闘の末に再び殺戮の嵐が吹き荒れる。
死と隣り合わせでないと生きる実感の持てない男の、全能力がスパークする。殺し屋との奇妙な心の交流、だまし合いの果てに生き残るのは誰か。読みかけで本を閉じることは出来ない。
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