映画『のんちゃんのり弁』
2009年日本映画。
母親が幼稚園児の一人娘のお弁当を手際よく作っている。子供のためのお弁当を作っているときの母親は、子供がそれを食べたときのことを想像するはずで、だから優しい顔になる、というのはたいていの人が思い込んでいることで、しかし冒頭のシーンの母親の表情は思い詰めたような硬いものであることでただならぬ事態であることを予感させる。
手荷物を二つ抱え、お弁当を入れたリュックサックを娘に背負わせた母親は子供の手を引いて朝の街を歩いて行く。出て行く母子の横でいぎたなく眠る男の姿がチラリと見える。
この前に観た『毎日かあさん』につづいて、ぐうたら亭主に振り回されながら生きる子持ち女の戦いを描いた映画なのであった。ただ、『毎日かあさん』が漫画という自立するための能力をもっていたのに対して、こちらの母親は、何一つ人に優れたものを持ち合わせていない。
そんな母親役を小西真奈美が演じていて、大丈夫か?とハラハラすることになる。のんちゃんとは娘の愛称である。小西真奈美は名女優ではないが魅力的だ。作品としてはどうということはなく、料理に目覚めた主人公が弁当屋として自立するまでの悪戦苦闘を描いたもので、最後まで楽しめたのは彼女の魅力によるものだろう。それに脇役の倍賞美津子や岸部一徳のサポートがいいからだろう。人生の厳しさとけじめについて脱力的に、しかしぴしりと言ってのける岸部一徳ははまり役だった。私もこういう大人の男になりたかった。
この映画とは関係ないが、『ノンちゃん雲に乗る』という映画を子どものときに見たことを思い出した。ストーリーはよく覚えていないが、主演のノンちゃんを演じていた鰐淵晴子が可愛かったことだけはよく覚えている。
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