補助線
花巻の宮沢賢治記念館を三回ほど訪ねている。最初は母に勧められた。母は、友人と訪ねて好かったからお前も行って見ろ、と言った。私が宮沢賢治が好きなことを知っていたからだ。少し前に記念館もリニューアルされて、ちょっとこぎれいになっている。
宮沢賢治が書いた童話や詩を、どうしてこのような発想をしたのか、そのイメージにはどんな背景があるのか、知りたいと思っていたが、録画してあったNHKのドキュメントでその答えが呈示されているのを観た。
幾何学を解くときに補助線を引くと氷解することがある。呈示されていたのは、岩手高等農林学校時代に親友となった、山梨出身の保阪嘉内との関係である。宮沢賢治の年譜で承知していたけれど、ここまで深く影響していたのを始めて知った。彼を補助線として、宮沢賢治の作品が詳細に分析される。
こうして始めて『風の又三郎』や『銀河鉄道の夜』の世界の表す意味が多少わかった。
宮沢賢治は生涯独身だった。親友への過剰な思い入れを観て、そこに同性愛的な傾向を読み取ることは可能かもしれないが、性愛的なものはなかったように思う。妹トシへの深い愛情を観ても、もともとそういう情の深い人物なのだと思う。妹トシも補助線の一人であることはたしかで、『永訣の朝』という詩は何度読んでも胸が熱くなる。「あめゆじゅとてちてけんじゃ」というフレーズの意味を理解したとき、それが頭から離れなくなる。
もう一度宮沢賢治の詩や童話を読んでみようかと思う。
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