いいよなあ
眼を酷使している。眼は大事にしなければならないし長持ちもさせたいので、眼の疲れを感じたら意識して休めるようにしている。そのときには音楽を聴く。以前は映画音楽やイージーリスニングの曲を聴くことが多かったが、四五年前にデジタル音楽のクリアさのすばらしさに出会って、ピアノ曲をよく聴くようになった。
学生時代、帰省の電車の中で中学校時代のクラスメイトにバッタリ会った。特に親しかったわけではないが人なつっこい人間で、気がついて向こうから話しかけてきた。性格的にヘラヘラとして軽いタイプではあるが、内心に歪んだものを抱えている男でもない。互いの消息を話した後、彼が「ギターは好きか」と訊いてきた。
大学の寮でギターの得意な先輩がいて、ギター曲をよく聴かされていたし、ギターの手ほどきも受けたが、もともと楽器が苦手でしかも左利きだからどうもうまく弾けない。そんなことを思いながら「きらいではない」と返事した。彼は「ギターはいいよなあ」と感に堪えたようなうっとりとした顔でいった。
よく聞くと、かなりの入れ込みようで、本場のギターを聴きに行くためにスペインに行きたいのだ、などという。そのためにスペイン語も勉強しているのだという。あまり勉強熱心でもなく、向上心もない男だと思っていたので驚いた。好きなものに出会うことで人間が変わることもあるのだ。
ピアノ曲がこれほど気持ちの好いものであるのか、いまそんなことを感じながら、あの男はその後どうしたのだろう、などと思ったりした。
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