瓢箪から駒
昨日のBSフジのプライムニュースに出席していた元外務官僚でオランダ全権大使を努めたことのある東郷氏が、岸田首相のウクライナ訪問に批判的で、特に虐殺のあったとされるブチャを訪問しない方がよかったと述べていた。理由は、ロシアとウクライナの言い分が異なるからだという。そういう係争のある場所には行くべきではないそうで、東郷氏は報道されている虐殺の映像に偽装があると見ているようだ。
確かに被害人数など、被害者側が盛ることはあり得ると思われるが、ロシア側の主張するような全面的な偽装だという主張は、さまざまな報道を見聞きする限り無理があるように思う。東郷氏はもともとロシア・スクールとみなされていて、ロシアの立場に立つところがあるが、いまの国際情勢の中での日本の元外務官僚として、このようなロシア寄りのことばは聞いていていかがかと思われた。
ふと日本軍が行ったという南京虐殺を想起した。日中戦争はどのように理屈をつけようとも明らかな日本の侵略戦争であり、南京で多数の市民が殺されたらしいことは否定しようとしてもできないと私は思っている。便衣隊といって、兵士が軍服を脱いで市民に紛れ込んでいたものを探しだし、殺していったという事実はあったようで、そのときに間違って市民も殺されたと言われる。また、略奪も少なからずあったのも事実のようだ。ただし、その数は中国によって十倍百倍に盛られているだろうことも想像できる。
とはいえ、盛られていたから事実はなかったということは出来ないのである。ブチャでも盛られた事実があったかもしれないからといって、虐殺そのものがなかったかのようにいうのは納得できないことである。いまさらロシアに配慮する東郷氏の姿勢は奇異としか見えない。
私は岸田首相のウクライナ訪問を、行く前はあまり積極的に支持しなかったけれど、今回は絶妙なタイミングで行くことになったことは瓢箪から駒とはいえ、結果的によかったことを認めざるを得ない。番組でも言っていたけれど、習近平がプーチンの招待でモスクワに行ったニュースがいささか霞むことになったからである。もしかしたら、習近平にとってもありがたいことだったかもしれないとも思っている。習近平も、世間的に分の悪そうなプーチンにあまり肩入れしていると見られたくないらしいから。
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