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2023年3月 4日 (土)

中国の歴史書

 竹内康浩『「正史」はいかに書かれてきたか』(大修館書店)という本を読んだ。副題は『中国の歴史書を読み解く』というもので、著者が大学で中国の歴史書について講義したノートをもとに、「史学史」というものを一般向けにわかりやすく書いたものだ。

 

 この本は以前から棚にあった。この出版社の「あじあブックス」シリーズの本を買い集めてあったものの一冊だ。飛ばし読みはしてあったが、丁寧に読んだのは今回が初めてである。読んだきっかけは先般読んだ宮城谷昌光の『三国志』で、一般に小説の三国志は正史の『三国志』ではなく、『三国志演技』をベースにしていることから、正史というものについて少し確認しておきたかったからである。

 

 中国には正史と呼ばれるものとして一般的に二十四史が選ばれている。正史はそれ以前の王朝が滅びた後、後代の王朝が公的に編纂するというのが一般的である。ただ、正史とされているが私撰と呼ばれるものもある。『史記』などはそのひとつだ。ところで中国の歴史書の数は膨大で、清朝乾隆帝の時代に『四庫全書総目録』に収められているものだけで合計2134部、38224巻という。もちろん散佚したものはここに含まれていない。中国は歴史を書き残すのが好きなのだ。

 

 正史の最後は『明史』で、次の王朝の清の時代に編纂された。その清のことを記した『清史』は書かれたことは書かれたが、内容がお粗末すぎて正史に価しないとして正史として認められていない。

 

 史学史といえば、日本では内藤湖南の『支那史学史』を嚆矢とするが、未読である。いつか読みたいと思っている。正史は歴史書ではあるが、歴史を事実のままに書いたものとはいいがたい。当然それを書いた時点での時代の制約に捉われているから、書けることと書けないこと、書かなくていいことを書いたりされている。それらを読み解くのが「史学史」という学問のようだ。

 

 今回読んだ本では『歴史』というものを学ぶ意味について、著者の熱い思いが語られていてなかなか好い読後感を持った。そのことについては長くなるので、次回に文章を引用して遺しておこうと思う。

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

こんばんは
中国人はある意味歴史好きですが、翻って私たち日本人はどうでしょか?つい最近までマルクス主義に毒された進歩的文化人と名乗る”退歩的非文化人”が文字通り日本にそもそも合うわけがない史的唯物論を日本史に無理やり当てはめ文字通り日本史を凌辱し尽くしました。
これは単純に彼らのせいだけではないと思います。そもそも日本人には日本史、ひいては日本を愛する感情がないためだと思います。それは今の歴史教育を見ても一目瞭然で、無味乾燥な知識の植え付け(やがては大部分は忘却の彼方へ行くのが確実の、です)をするだけで”生きた歴史”を学ばせてくれません。私は昔から歴史好きでしたが、学校で習った歴史など何の役にも立たないと思っていましたし今でもそう思います。
では、
shinzei拝

shinzei様
日本には「日本書紀」のようなものもありますし、ほかにも歴史書と考えていいものが少なからずあると思います。
日本史の年表を開けば一目瞭然です。
中国との比較でいえば少ないといえますが、だから日本人には日本を愛する感情がないというとまではいえないのではないでしょうか。
戦後の歴史教育は、あまりにも政治的に扱われたことによる間違いの結果であって、歴史に意味や意義を感じた人は自分できちんと学んでいると思います。
すくなくともたくさん読む本があって、どこかの国とちがって自由に選べますからね。

「日本人は歴史好きか?」という問題ですが
私は日本人ほど時々の歴史を記録(筆記)し
後世にその記憶を伝えている民族はないと思います。
そのことは現存する官民を問わない夥しい歴史書を見てもわかりますね。
(地方の元庄屋の蔵には未知の古文書資料があるかも)。
shinzei氏が言われることもわかりますが
それは戦後、マルク主義的史観を忠実に受け止め
教壇で「演説」した教員によるところが大きいのでは?
その弊はマスコミ民主主義によっていまも命脈を保ち、健在です。
突然の割込み失礼しました。

ss4910様
日本人は識字率が比較的に高くて、記録しておくことが好きであるという点は事実であろうと思います。
手紙や日記のたぐいは厖大なものがあるでしょうし、それらが資料的に意味のあるものである場合も少なくないでしょう。
その日本人に歴史から興味を奪う役割を戦後教育がしてきた、といえなくはありませんね。
大げさに言えば、教育が経済合理性の徒に成り下がってしまって、学ぶことのおもしろさを見失わせているということでしょうか。

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