映画四本
先月後半に体調を崩してから、ほとんど映画を観なかった。昨日ひさしぶりに、認知症のために引退が伝えられたブルース・ウィリスの映画を二本(『キル・ゲーム』、『ミッドナイト・キラー』)観た。『キル・ゲーム』はある種のサバイバル・ゲームものでそこそこ面白かったが、出来のよい映画とはいえない。もう一本の『ミッドナイト・キラー』は展開がゆっくりすぎてついて行けず、途中で見るのをあきらめた。最後まで見たらたぶん面白かったかもしれないが、それだけの忍耐力がいまはない。
今日はなんと朝から立て続けに四本も観てしまった。おかげでブログを書く余裕がなかった。一本目は『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』(2012年アメリカ)。この映画は十年ほど前に、海外在住のブログ仲間の方が「面白かった」とブログに書いていたので録画していたのだが、観る機会がなかった。ようやく観て、なるほどたいへん出来の良い映画だと納得した。映像がとにかく鮮やかで幻想的で美しい。もし観ていない人は探してでも観る値打ちがある。
二本目は『トランセンデンス』(2014年イギリス・中国・アメリカ)。ジョニー・デップ主演のSF映画で、ジョニー・デップが演じる科学者は物語の前半で死んでしまうが、ずっと登場し続ける。こういうタイプの、記憶をすべてコンピューター上にコピーすれば、本人の意識を再現できるというSF映画はたくさんあるが、矛盾の多い陳腐なものが多い。その点この映画はまあまあ許容範囲か。ちょっと哀しそうなジョニー・デップだからこそ成り立つ映画といえるかもしれない。
三本目は『日々是好日』(2018年日本)。原作は森下典子、監督・大森立嗣、出演・樹木希林、黒木華、多部未華子ほか。この三人は大好きな女優たちなので、観るのを楽しみにしていた。静かに淡々と話が進んでいく。「お茶」の世界の奥深さ、人間の感性の繊細さ、生きていくということ、そして人と人とのかかわりの大切さなど、しみじみと考えさせてくれる作品だ。期待通りの映画だった。
四本目は『山の音』(1954年日本)。川端康成の小説を映画化したもの。監督・成瀬巳喜男、出演・原節子、山村聡、上原謙、長岡輝子ほか。原作をきちんと読んでいないけれど、映画では描き切れていないそれぞれの登場人物たちの心理は読み取ることができる。原節子の演じる菊子の舅(山村聡)への思慕、そしてそれは無意識の舅の思いの反映でもあり、同時に死の影でもある。それぞれのおさえた演技の中に登場人物たちの情念が燃えている。おさえにおさえたものが吹き上がるとき、解放が訪れる。見方によれば、『家』からの女性の解放ということが表現されていると言い得るかもしれないが、私はそういう解釈まではしたいと思わない。
”山の音”をご覧になったのですね。
私は7,8年前だったか、深夜放送で観ました。
その時代の作品には監督、出演者に、言うに言われぬ”品格”というものがありました。まぁ、時代と言われれば仕方がないと思いますが・・・。
2日前、たしか貴方の好きな”多部未華子”のドラマを観ました。
彼女には毅然とした大人の女と少女の雰囲気が同居していて、好きなタイプの女優です。
投稿: おキヨ | 2023年3月 9日 (木) 11時58分
おキヨ様
好きなひとが好きだと言われると、嬉しくなります。
監督・俳優に品格があるということについては同感です。
自分の役柄についての知的理解ができていたということも見えますね。
もともとの川端康成の描く物語はある意味でかなり性的です。
それを描くわけにはいきませんから、あのような映画になりましたが、小説を知っている人にとってはよく分かっていたことと思います。
いろいろ考えさせてくれる映画でした。
それを書き出すときりがないところがあります。
投稿: OKCHAN | 2023年3月 9日 (木) 12時44分