『本が好き・・・』
高島俊男『本が好き、悪口言うのはもっと好き』(文春文庫)というこの本を久しぶりに再読した。私の知識がもっともっと深ければ(つまり本物の勉強をとことんしていたら)この人のような生き方もいいなあと思うが、実際のところはそれなりにたいへんなようだ。正論はときに味方が少ない。味方が少なければ生きづらい。生活も成り立ちにくい。けれど本物の友だちはできるだろう。
この中には長短さまざまな文章が収められている。前半は軽いエッセー風のもの、後半は「支那」という言葉を廻って詳細な論拠で持論を展開する『「支那」は悪い言葉だろうか』とか、『ネアカ李白とネクラ杜甫』という李白と杜甫についての比較評論、『なごやかなる修羅場』での連歌についての考察などが読みでがある。最も記憶に残るのが『回や其の楽を改めず』という狩野亨吉(こうきち)についての評伝だ。夏目漱石との関係、また幸田露伴との関係、さらに内藤湖南との関係は夙に知られるところで、特に内藤湖南を京都大学に招聘するにあたり、学長である自らが身を引いたことで知られる。
私の頭の中にある狩野亨吉はこの文章を読んで形作られていたことを思い出させられた。また記憶が薄れたころ、再読したい本である。
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