中国商魂
NHKの『中国商魂』というドキュメント番組で、中国人のアフガニスタンでの商売展開について報じていた。制作はアルジャジーラ。アルジャジーラでないとこういう取材は無理だったろう。ただしBBCなどと較べると突っ込み不足の感は否めない。中国はアフガニスタンを隣国という。地図をよく見ると、わずかであるが中国とアフガニスタンは国境を接している。中国は他の国を通らずに陸地からアフガニスタンに行くことができる。道路があるかどうかは知らないけれど、必要なら中国は道路を作るだろう。
そういえば、北朝鮮とロシアは日本海に接したところでわずかながら国境を接している。つまり、中国は日本海側には出口がない。そのことはもしかすると、とても日本にとってだいじなことではないかと思う。
さてアフガニスタンでの中国の進出の状況である。一攫千金を求めて、または中国で芽が出なかったから一旗揚げようとして、中国人がアフガニスタンになだれ込んでいる。しかしアメリカが撤退した後アフガニスタンを支配しているのはタリバンである。タリバンは教条主義で国を統治しようとしている。タリバンは中国からの援助を期待しているから中国を受け入れているが、その思想はいささかも変えるつもりはない。
どんな状況下でも、したたかにしぶとく食い込むのが中国人である。以前は日本人もそうだったが、今は見る影もない。その中国人ですらさすがにアフガニスタンでは苦戦しているようである。資金をかき集めて乗りこんできた中国人たちも、遅々として事業が進展せず、軌道に乗る見通しのない状況が続いているようだ。タリバンが支配して二年、当初は意欲に満ちていた中国人事業家たちの顔にも疲労の色がただよっているようだった。
中国は世界中の発展途上国に乗りこんで、札びらで顔を張って商売を展開し、借金まみれにして資源や港湾や鉄道や道路などの利権を獲得しようとしている。無尽蔵とも見えた資金があったからできることで、それによって得られるものが、つぎ込んだ金に見合えば万々歳である。しかし借金が返せないような国に金を貸せば、その金は焦げ付いているのである。そんな焦げ付きなどにびくともしない間はよかったけれど、それが世界中で起きていることなら全体としてはたいへんな金が焦げ付いていることになりはしないか。
中国の不動産大手が相次いで厖大な赤字を出し、中国経済に赤信号がともったのではないかと見られている。日本のバブルがはじけた後、日本政府は巨額の資金投入を行って破綻の影響を少なくするように努めた。とうぜん中国も日本の前例を見ているから、どうしたらいいか分かっているはずなのに、今のところ不動産破綻対策のための資金投入をする気配がない。習近平の意志だとも言われるが、もしかしたらそもそも投入できる資金そのものがないのではないか。どうしてないのか。貸しまくっているから。
イギリスが五年ぶりに中国と経済協力交渉をはじめた、と報じられていた。イギリスはなにを期待しているのだろうか。中国は日本には厳しく、ヨーロッパやアメリカには優しい態度に転じて日本をうろたえさせるつもりかも知れない。いわゆる近攻遠交策である。それも経済が順調だからできることで、イギリスもしたたかだから、中国の思惑通りとはいかないだろう、と思いたい。
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