ケンジトシ
いままで本物の舞台は二度か三度しか見に行ったことはない。テレビで舞台を観るのも年に一度くらいか。『ケンジトシ』というのは、宮沢賢治と妹のトシコのことで、北村想の脚本の舞台である。宮沢賢治を中村倫也が、トシコを黒木華が演じている。この舞台を見る気になったのは、まず第一に黒木華が見たかったからで、そして花巻の宮沢賢治記念館を三回も訪ねたことがあるくらい宮沢賢治が好きだからである。
この舞台は普通に物語的に進行しない。一幕一場で、石原莞爾を狂言回しにして、音楽はヴィオラ一つのみ。宮沢賢治の童話や詩、日蓮宗をもとにした宗教的世界観をある程度知らないと、何が何やらわからないかも知れない。とはいえ知らないのにこの舞台を見る人もいないだろうからそれで好いのだろう。
私もすべての童話や詩を読み込んでいるわけではないが、それでもこの劇に使われているものはほとんど承知のものだったので、その世界観についていくことができた。それと、純粋ではないものの岩手弁が駆使されるので、その言葉になじみがないとほとんど聞き取れないかも知れない。そのために狂言回しの石原莞爾がいるといっていいだろう。幸い私は東北で大学を過ごし、寮生活して岩手出身者はもちろん、さまざまな東北弁の世界にどっぷりはまっていたから、それを聞き取ることができる。
また花巻に行きたくなる程度にはこの劇を楽しむことができたが、それよりもやはり黒木華の表情、特に口もとにうっとりし、ますます魅せられて、それだけで見た甲斐があった。
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