彼女のいない部屋
『彼女のいない部屋』は2021年のフランス映画。冒頭で、早朝まだ寝入っている夫と二人の子供(娘と息子)を置いて、車ででていく女性の姿が描かれる。彼女の意識には残された夫と子供たちがどのように生活していくのか、彼女がいなくなったことをどう受け止めるのかが想像されていくのだが、その想像にはなんとなく茫漠とした感じがある。そうしてなぜ彼女がでていくのかが見ているこちらには分からない。想像の家族が茫漠としているのは、そこに彼女がいないのだからとうぜんではあるのだが。
彼女が突然意識を失うほど酩酊したり、娘と息子がある程度成長した姿で描かれたりして、時間の感覚がゆがみはじめる。すべては彼女の意識の中の出来事であることが感じられるが、実は意識されている夫と子供たちの生活の方が現実で、彼女の存在そのものが実は想像の世界かも知れない、などと思われてくる。
やがてすべてが明らかになるとき、なにが現実でなにが妄想なのか、ぼやけていた映像が次第にピントが合うように、見ている私にすべてがわかってくる。こういう映画はヨーロッパの、特にフランス映画らしいといえばいえる。バラバラのピースがはまり合うように、すべてに説明がつくのだけれど、それが満足感を生まずに奇妙な余韻を残す映画となっている。
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