大沢在昌『帰去来』
大沢在昌『帰去来』(朝日新聞社)は、パラレルワールド警察小説と銘打たれたSFミステリー。主人公は警視庁の女刑事で、連続殺人犯をおとり捜査で張り込み中に犯人に襲われる。死の淵で別世界に跳んだ彼女は異なる世界の自分として目覚める。そして当初は無理仕立てにみえたこのような事態が、実はすべて必然性のあるものであることが次第に明らかになっていく。
分厚い(550ページ)この本を一度読みかけて途中で放り投げていたのだが、今回一から読み始めて次第に興が乗り、三日ほどで読了した。やはり大沢在昌は面白い。異世界の日本はダークな世界である。その世界をもう少し膨らませて書きこんだらシリーズものにでもなりそうだ。すべてが完結した後のその世界がどうなっていくのか、それはそれで別の歴史が刻まれていくのだろう。ある意味で自分に覚醒した主人公の物語でもあるこの話にけっこう感情移入した。それができればとても面白く読めるはずだ。
同じ棚に大沢在昌の『暗約領域』という本があったので読み始めたら、どうも既読である。『新宿鮫』シリーズのⅩⅠであるから、とうぜん買ってすぐ読んだにちがいない。こういう本は読み終えたら処分することにしているのだが、どうして残っていたのだろう。読み始めたら面白くてまた読みつづけている。700ページを超えるから読みでがある。ありすぎる。
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