忘れたはずの
若いときに仕事のことでイヤな思いをしたことを思いだした。不正行為ともいえることなので、そのことを明らかにするとイヤな思いをさせた人間の進退に関わる。しかもそれを上司が了解していた。了解していたというより、無知でそれが不正だと認識できていなかった。そしてその責任は私に降りかかるように仕組まれていた。正義の味方になれば自分自身も含めての問題になるだろう。
理不尽ながら、その問題を自分だけで対処した。切り抜けるためにあれほど頭と神経を使ったことはない。問題が片付いてすべてが見かけ上なかったことになったあと、忘れようと思った。内にくすぶりつづける怒りも、次第に治まり、過去の記憶としてしまい込まれた。過去になったからといって人に話すつもりもなかった。そのことが突然意識の表面に浮上した。なにがきっかけだったのだろう。
そのときにどうすれば良かったのか、自分が押さえ込んだことが正しかったのかどうか、そんなことをくどくど考えていた。しかしいまさらそんなことで心を悩ませても仕方がない。そのイヤな思いをさせた張本人も身を持ち崩したあとに病気に罹り、すでにあの世にいっている。死ぬ前にたまたま会うことがあって、痩せ衰え、杖を引いて歩く姿を見た。当人はなにも感じていないようだった。
その経験が私を鍛え、覚悟を決めさせ、生き方の軌範を作り上げた。そのことはもう一度錘を付け直して記憶の底に沈めようと思った。
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