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2023年10月 2日 (月)

家族の勝手でしょ!

 前回のブログは直接内容に関係はないが、今回のブログの枕にしたつもりである。

 

 岩村暢子の『家族の勝手でしょ!』(新潮社)という本をようやく読み終わった。ネットで取り寄せた彼女の本をこれですべて読み終えた。たった二百ページ足らずの、しかも写真が数多く収められたこの本を読むのにどうして時間がかかったのか。読み進めるごとに考えさせられ、身体から力が抜けていく思いがして中断を繰り返したからだ。すでに読んだ『変わる家族 変わる食卓』、『普通の家族がいちばん怖い』で、食卓の調査から家族の変容を、そして世代間の断層を、著者の岩村暢子は指摘した。これらの本を読んで養老孟司は驚嘆し、彼女を呼んで対談している。それを読んだことで私は岩村暢子を知った。

 

 この本を読んで、何だこれは、まさか、などと思う人がほとんどだと思いたいが、実はそう思う人と、どうしてこれが問題なの、と首を傾げる人とに截然と分かれるのが現実なのかも知れないことに慄然とする。

 

 どういうことか引用したいけれど、そうするとすべて引用したくなり、それなら本を読んだほうが早いということになるので、興味のある人は是非読んでみてほしい。副題は『写真274枚で見る食卓の喜劇』。

 

 具体的なことがないと読む動機が発生しないだろうから、子供の好き嫌いについてのあるページを引用する。

 

 子供の好き嫌いに対して、今の親はとても寛容だ。料理を工夫したり子供に働きかけて嫌いなものを食べさせようとする親をほとんど見なくなってきた。嫌いなものを無理に食べさせない理由として、2000年代初頭までは「食事は楽しく食べたいから、嫌がるものは押し付けたくない」と語る親が多かったが、近年は違う。「私のストレスになるから、そういうことはしたくない」と語る親が一番多くなっている。
 たとえば、野菜嫌いな子供を持つ主婦(38歳)は、「工夫して野菜料理を作っても、成果が出ないと『私がイライラする』からやめた」と言う。「食べさせようとして言っても子供が聞かないと、『私がカチンとくる』から言わない」と語る主婦(32歳)もいる。「一生懸命作っても、子供が食べないと『自分が頭にきちゃって』喧嘩になっちゃうから作らない」(36歳)、「子供が食べたがらないものを食べさせることは『私が疲れること』なのでしない」(41歳)「食べさせようとして食べないと『私のストレスになる』から言わない」(34歳)「いやな顔されると『私の方がイヤ』なのでしない」(37歳)など、類似の発言は多数出てくる。「食育では子供と一緒に作ったら好き嫌いがなくなったとか言うけれど、嘘ばっかり。とてもやっていられない」と話す主婦(45歳)もいた。「食べたがらないものを子供に食べさせることは、時間にゆとりのあるときにしかできない私のいちばんイヤなこと。子供が食べたときには、子供より自分自身に対して『よしよし、よくやった』という気持ちになると語った主婦(36歳)もいて、どの主婦も子供より自分の心身をかばうことを優先しているかのようだ。
(中略)
 だが、主婦たちは、子供が入園・入学前だと口を揃えたようにこう言う。「幼稚園(小学校)に入って給食が始まったら、きっと食べられるようになる」と。そして給食が始まると「幼稚園や学校で食べているだろうから家では食べなくいい」と言う。さらには「学校で無理やり食べさせられているから家では無理させず、好きなものを食べさせてやりたい」(36歳)、「給食で出されて困っているだろうから、せめて家では食べろとはいわない」(46歳)という発言も出てくる。
 中には「幼稚園では全部食べ終わるまで先生がみてくれるからのこさず食べてくるけど、家では私はそこまでみてやれないので(食べられなくても)仕方ないですよ」(40歳)とか、「嫌いなものを食べさせるのは、時間に余裕のある学校給食ですることだ」(36歳)と語る親さえいた。

 

どうです?これでほんの1ページ2ページを引用しただけであって、こんな話が満載なのである。
 
 すでに家庭には「親」というものが存在していないのではないか、と思えてくる。

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コメント

こんにちは
子供さんの食事で思い出しましたが、ある小学校での出来事でその学校は給食完食させないといつまでも帰れないという制度らしかったのですが、まだアレルギーという概念が薄かった時代に給食のそばがアレルギーで食べられなかった生徒にバカな教員が無理やり食べさせて家に帰したところ、翌日その子がアナフラキシーで亡くなったと言います。
何事も昭和的な根性主義ではだめだのだなあ、と思わされました。
では、
shinzei拝

自身の身勝手さは見えず、愛情も勘違いしている人の主張は、聞いているだけで疲れてしまいます。
(私もそんな面があるのかもしれませんが・・・)

shinzei様
アレルギーの怖さを知っていて無理やり食べさせたなら犯罪ですが、当時はそういうことはまだ知られていませんでしたからね。
仕方のない面もあったと思います。
無理強いとしつけの境目はなかなかむずかしいです。
根性主義は私もきらいですが、子供にはしつけが必要だとも考えています。

けんこう館様
親の役割というものが全く分からない人が生物的に親になることが多くなっているのが現代だということのようで、愛情以前の問題のように思います。
愛情があるとすれば、自分に対してだけに見えます。
そういう私の価値観は、現代の若い人には時代錯誤に見えているのかも知れません。

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