『マリスアングル』
誉田哲也『マリスアングル』(光文社)を読了した。捜査一課の死神と陰口をささやかれる女刑事、姫川玲子シリーズの最新作である。最初の『ストロベリーナイト』以来、たぶんシリーズは欠かさず読んでいると思うが、久しぶりなので飛びがあるかも知れない。累計で500万部というから人気があるのだ。テレビドラマや映画化もされている。
巻末には決まり文句だが「この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とはいっさい関係ありません」と付記されている。しかしこれくらい皮肉な註釈付記はない。
この警察ミステリー小説のサブテーマは、いわゆる「慰安婦」問題である。朝陽新聞という会社が「慰安婦」問題をでっちあげた吉田証言を事実と認定して、大々的に世間に煽った経緯が背景として語られている。実在の団体と関係ないという付記は、現実がフィクションであることの皮肉をあざ笑っているように見える。吉田証言が事実無根であったことを指摘されながら何十年も誤報を認めなかったある新聞社は朝陽新聞という名ではないから、フィクションだというのは間違いないのであるが、この小説で述べられていることの方が真実であるらしいことをいまは多くの人が知っている。
この問題がさまざまなところに波紋を起こし、日本と韓国にどんな大きな亀裂をもたらし、禍根を残したたかはいうまでもないが、この小説の事件のような個人的な波紋も数多く生じていたかも知れないと思わされる。それによって取り返しのつかないほど傷ついた人が、溜まった怨念をあるきっかけによって暴発し、どのような行動をとるか、それをデフォルメして見せてくれたのがこの小説で、作者はまさにそれを書きたかったのは明らかだろう。
こんばんは
私も年末年始のために本を集めました。ほとんどが図書館で借りた本ですが・・・。
こういう時期に本を読むと本の内容がよくお腹に入るのですよねえ・・・。
それでは良き年末を。
では、
shinzei拝
投稿: shinzei | 2023年12月29日 (金) 15時20分
shinzei様
久しぶりに娯楽本ばかりですが、取りそろえて読みまくろうと思います。
shinzei様も充実した年末年始を過ごされますように。
投稿: OKCHAN | 2023年12月29日 (金) 15時32分