『魚玄機』を読む
奥野信太郎『中国文学十二話』を読み終えたので、そこに取り上げられていた晩唐の女流詩人魚玄機について書かれた森鴎外の『魚玄機』を読んだ。美人で天才詩人だった魚玄機が、人を殺して刑死するまでの生涯を彼女の詩をいくつか引用しながら描いている。私の読んだのが旧漢字旧仮名遣いのもので、本文はともかく、詩の部分は白文のままだからおぼろげにわかるところもあるという程度にしか詩情が読み取れない。それでも余韻の残る伝記小説であった。
刑死したのは彼女が二十六歳のときで、事情があって道教の観(仏教の寺に当たる)で女道士となっていた。その観の名が咸宜観というので、先日訪ねた日田の広瀬淡窓の咸宜園を思い出したりした。
奥野信太郎の本では、唐詩の話や四大奇書(『水滸伝』『三国志』『西遊記』『金瓶梅』)のこと、さらに中国の怪異譚、『聊斎志異』『閲微草堂筆記』『子不語』のことなどが系統立てて語られている。中国の怪異譚は大好きなので、いろいろ取りそろえていて、上の三つは総て揃えているし、ほかにも数多く本棚にある。ついまた引っ張り出して読みたくなるではないか。
それと、先日立ち寄った下関の壇ノ浦を思い出して、『平家物語』を一度きちんと読んでみたいと思ったりしている。講談社学術文庫で四巻本があるようなので、取り寄せようかどうしようか迷っているところだ。
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