映画『愚行録』
映画『愚行録』(2017年日本)はミステリー作家・貫井徳郎の同名小説を原作とする映画。主演は妻夫木聡。貫井徳郎のミステリーは『慟哭』など、二三冊読んだことがある。読後感の重い小説ばかりだった。この映画の原作は未読。
プロローグでは、バスの座席に座り、ぼんやりしている主人公の姿と、同じバスの中の乗客の姿が丁寧に映されていく。そのバスでのちょっとしたハプニング、そしてバスを降りた主人公であるルポライター(妻夫木聡)が向かった先は警察の拘置所にいる妹(満島ひかり)のところである。彼女は乳児虐待で拘置されたところで、こどもは瀕死状態で病院に収容されている。
彼はいま一年前に起きた一家殺害事件を追っている。犯人が見つからず、事件は迷宮入りしている。夫の友人関係、会社の同僚、さらに妻の交友関係などの人物につぎつぎに面談し、この夫婦の人物像が次第に明らかになっていく。
並行して妹がどうして乳児虐待に至ったのか、それも次第に明らかになっていく。彼はいったいなにを明らかにしていこうとしているのか。それらのバラバラの話が次第に収斂をはじめ、驚くべき真相が暗示される。
人間の根源的な愚行の積み重ねがなにを結果するのか。主人公の原罪も愚行そのものであることに強烈な衝撃を受けるはずだ。気持ちが優しくて気の弱い人にはお勧めしかねるほど強烈であることを承知して観て欲しい。
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私も貫井徳郎の作品を何冊か持っています。
今の時代、抜きんでたミステリー作家の作品を読んでみたいと思って買い込みましたが
悲しいかな目が、本を読みとおす体力が問題となりました。
投稿: おキヨ | 2023年12月 6日 (水) 11時56分
おキヨ様
貫井徳郎のミステリーはかなり重いものが多いですから、あっと思わせられる快感は大きいですが、読後の重さもかなりきついところがあります。
その点英国や北欧のミステリーの方が読みやすいところがありますね。
いくら重いテーマでも、多少他人事に読めますから。
投稿: OKCHAN | 2023年12月 6日 (水) 12時06分