北欧ミステリードラマ三昧
この三日ほど、読書したり北欧ドラマを観たりと、いつもよりもすこしせわしない。何しろ二種類、全八回のドラマと全六回のドラマを一気に観たりしていた。夜更かしして、そのために今朝も朝寝坊した。
ドラマのひとつは『レベッカ・マーティンソン』シリーズの第2シーズン全八回。前後編で一話となっていて、だから全部で四話である。ストックホルムでやり手の弁護士として活躍していたレベッカは、両親の相次ぐ死などもあり、故郷の山間部の小さな町を捨てて帰ることもほとんどなかったが、育ててくれた祖母の死の知らせで久しぶりにその町に帰り、事件に遭遇して・・・というのが第1シーズンの発端だった。とにかくそのレベッカの美貌であることにまず惹かれたが、このレベッカという女性はとにかく気が強い。警察や法的規制を無視してひたすら暴走していく。第1シーズンでは、それがそもそも彼女のトラウマが原因であることも次第にわかるように作られていた。そして現地でにくからず思える男性にも出会い、一時的な帰郷のはずが居座ることになり、彼女の暴走が端緒となって事件は解決した。
今回見た第2シーズンでは配役が変わっていた。前回ほどの美貌ではない女優が演じていたが、その気の強さ、暴走ぶりに似合うタイプであり、最初は慣れないので違和感があったが、役柄には適している俳優で物語の進展とともになじむことができた。彼女は町の検事として採用されて警察に常駐し、ときに捜査にも参加している。そうして彼女なりのやり方でいつものように直感で暴走し、その結果事件を解決してしまう。ただ過去を見つめ直していくとともにトラウマが少しずつ解消されて、その暴走には多少の節度が生じている。それに彼女の直感にはそれなりの根拠もないではない。恋人になりかけた男は彼女と距離を置き、別の女性と暮らし始めているのだが、その男との関係も紆余曲折する。この男も前回と配役が代わっているし、確か前回は身体に一部不自由を抱えていたはずだが、今回はそういう設定は消滅しているようだ。縦糸横糸がいろいろ交錯して、ドラマは見飽きない。こういう、ある面で自分勝手な女性が私は嫌いなのだが、同時に強い女性は好きなので、彼女にいつの間にか感情移入してしまう。
とにかく山や草原の景色や雪景色の映像の素晴らしさがこのドラマの一番の魅力であることもつけ加えておく。
もうひとつは、『エンド・オブ・サマー 消えた少年』という北欧ドラマで、全六回、全体で一つの話である。五歳の時に行方不明になった弟のいる心理士の女性が主人公で、集団セラピーを仕事にしているが、多少本人自身も問題を抱えている。彼女の、弟失踪時の記憶が彼女を苦しめているのだ。弟が行方不明になってしばらくしてから母は湖で入水自殺をするのだが、それを彼女は目撃していた。
弟ではないかと彼女が思った青年の出現に動揺して真相を見直そうとするという、現在進行形の物語の展開と、繰り返し繰り返し反復される過去の彼女の記憶の映像が交互に描かれていく(ただし、一つ新しい事実がわかる度にその映像はより詳細に描き換えられていく)。彼女も故郷をほとんど捨てた状態だったが、真相を知るために故郷へ戻る。彼女には故郷へ逃げ帰らなければならない別の理由もあった。故郷には少し年の離れた兄がいて、警察官をしている。父もいて、弟らしき少年がいるという話に激しく動揺する。当時、少年を誘拐したのではないか、殺害したのではないかと疑われた男がいて、捜査が行われたが証拠はでず、釈放されるが、その直後に失踪してこの男も行方不明となっていた。
弟らしき男が彼女と前後するように真相を求めて動きまわっていることが分かって来る。むかしから町を牛耳っている死んだ母の兄、つまり主人公の伯父は町全体に不穏な空気が生ずることを嫌い、男の正体を知ろうと関与してくる。やがて男の正体がわかって・・・。
最後に事件の驚くべき真相が明らかになるのだが、気もちのよい治まり方ではない。それでも彼女は自分のトラウマを克服し、自らの生き方を選んで再び歩き出す。全体に北欧ドラマらしいダークな色調の映像で、物語もひたすら暗い。西洋の、特に北欧のむき出しの、オブラートのない人間関係というのが日本人にはちょっと辛いところがある。日本人でよかった。
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