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2024年2月18日 (日)

『白峰』

 いま『平家物語』を読んでいる。どうして平氏が栄えたのか、その経緯には保元、平治の乱があることは承知しているが、あまり詳しく知らないし、調べたこともない。先日のブログに、『平家物語』から連想して子供の頃の読書の一つに『雨月物語』があることを書いた。脇に積んでいる本の山にこの本を引っ張り出して加え、読み始めた。いくつかの話が収められているが、一番最初が『白峰』という話である。これはほかの話と違って過去に丁寧に読んでいないから、ほとんど初めて読む。謡曲のように怨霊の登場する話である。『雨月物語』というのはそういう物語なのだ。能でいえばワキが西行、シテの怨霊が崇徳天皇である。私が怪異譚が好きなのは、ここに端を発していると言って良い。

 

 バラバラなようで話はつながっているのである。

 

 白峰とは四国香川県坂出市青海町にある山で、崇徳天皇の陵および御廟のあるところ。物語は東国からみちのくの、歌の枕詞の地を訪ね歩いた西行が、思い立って西に足を向け、西国の讃岐の地に庵を結んだところから語り出される。芭蕉の『奥の細道』は、西行のみちのくへの旅の足跡をたどった旅でもあったが、ここでは置いておく。

 

 その西行が白峰の山に新院(退位後の崇徳天皇の呼び名)の陵(みささぎ)があると聞いて登り、草に埋もれた石積みを見る。そこで経を唱え、歌を詠むと、その歌に応えて崇徳天皇の怨霊が現れる。そこでのやりとりを理解するには、保元平治の乱の原因と結果についての知識がないと崇徳天皇が怨霊となった理由もわからない。こうして平家物語の原点へ話はつながっているのである。

 

 崇徳天皇といえば、菅原道真、平将門とともに日本の三大怨霊とされる。その怨霊がどのように祟りをなしたのか、この物語は西行にとってはリアルタイムの話でもあることを承知して読まないとならない。西行はまさに平家物語の時代の人物なのだから。そして祟りの一つに自分に弓を引いた源義朝を殺させた、という下りがある。義朝は頼朝や義経の父親である。義朝は平治の乱で清盛に敗れ東国へ落ち延びる際に、知多の係累を頼ったが裏切られて殺された。その墓が野間大坊というところにあって、先日弟と訪ねたばかりだ。風呂場で暗殺されたのだが、もし木刀の一本でもあればむざむざと殺されなかったものを、と恨みの言葉を残しているのは有名な話だ。

 

 恨みが恨みを生んでいる。そういう時代だったのだ。崇徳天皇、保元、平治の乱について、もう少し調べてみようと思う。

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コメント

崇徳天皇、保元の乱、平治の乱にフォーカスされたのはさすがの慧眼ですね。
中世日本史は古代や近世ほど輪郭が明瞭ではなく複雑でとっつきにくいのですが
武家政権成立への胎動だけでなく法制史なども個人的に興味があります。

ss4910様
日本史に疎いので、平家物語を手がかりに歴史を学ぼうとしています。
今さらですが、わかることから世界を少しだけでいいから広げられればと思っています。

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