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2024年2月21日 (水)

『スープとイデオロギー』

 『スープとイデオロギー』はヤン・ヨンヒ監督・撮影による映画で、『ディア・ピョンヤン』、『愛しきソナ』、『かぞくのくに』に続く第四作目。在日である自分の家族を見つめる彼女のクールでありながら熱いまなざしは、どの作品もこちらの胸に強く響く。元々両親は済州島の出身であるが、大阪に住んで朝鮮総連のシンパとして活動し、金日成や金正日から勲章などももらっている。息子三人を北朝鮮に送り、家族をあげて自分の身を削るようにして仕送りを続けてきた。

 

 監督のヤン・ヨンヒは兄たちとは別れて両親とともに在日として日本で暮らしてきたが、彼女は両親のそのような活動を批判的に見続け、それを映像化してきたのだ。長兄は北朝鮮で心身をすり減らして死去したことは以前の映画で知っていた。その後、映画でありのままの北朝鮮を報じたために彼女は北朝鮮から入国を拒否されるようになったので、兄たちやその家族、姪のソナ(『愛しきソナ』)とも会うことができなくなった。今回のこの映画では、父親はすでに高齢で死去している。

 

 今回は、彼女が結婚した男性と母親との関係、そして済州島で何があったのか、どうして南の済州島出身の両親が北朝鮮シンパになったのかが描かれている。私は文京洙『済州島四・三事件』(平凡社)という本をずいぶん前に読んでいて、その本を手に済州島へ行ったことがあり、記念館も訪ねていて、ここで何があったのか、普通の日本人よりは詳しく承知している。

 

 そのこと、つまり1948年の大虐殺事件(殺された数は一万人とも三万人ともいう)をこの映画で初めて知った人も多いだろう。その事件についての聞き取り調査が行われ、母親も聞き取りを受けるのだが、そのすぐ後くらいからにわかに認知症の症状が進んでしまう。母親は婚約者が殺され、自分にも危険が迫ったことを知って、弟と幼い妹を連れて決死の覚悟で日本へ逃れたのだ。その母親と、夫と三人で四・三事件七十周年の済州島に赴くが、そのときには母親は自分がどこにいるのかも判然としない状態になっていた。

 

 朝鮮半島の悲劇についてはその当事者しかわからないことで、そのことを正しく教えられていたらいまの韓国の人の反日は違う様相を呈していたのではないかと想像する。いま李承晩の再評価の映画が作られて評判になっているようだが、こうして再び歴史が歪曲されていくのだろう。残念なことである。

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