ひとつずつ
片付けも習慣になるらしく、昨晩、一段落の祝杯を挙げたのに、今日も少しずつ片付けを続けている。フローリングの床が傷つかないように敷いているカーペット類をみな順繰りにホコリをはたいて掃除機をかけ、ひとつずつ天日に干した。昨日までホコリでくしゃみと鼻水、涙まで止まらなくなっていたが、次第にそれが治まってきた。
掃除機をなんどかけたかわからない。薄汚れていた細部が次第にきれいになっていく。やることはまだ何百もあるけれど、ひとつずつ片付けていけばいつか終わる。いや、自分が片付かない限り、つまり生きている限り終わることはないか。
合間にようやく『平家物語』巻七の続きを読む余裕が出てきた。義仲軍が琵琶湖の両岸から都へ攻め上ってくる。平家の防衛軍は撃破され続け、平家に与して都を鎮護していた比叡山の山門も源氏方になびいてしまう。ついに平家は幼い帝を擁して都落ちに至る。いまは、ちょうど薩摩守忠度が混乱の都に引き返し、藤原俊成に自分の詠みためた歌集を託したところを読んでいる。
そういえば、先日、謡曲集の四番目ものに収められていた『俊寛』を読んだが、そのときに修羅物の中に『実盛』と『忠度』もあった。実盛はもちろん小松で討ち死にした斉藤別当実盛で、忠度は平忠度である。別に『敦盛』もあるから、あとでゆっくり読んでみよう。謡曲を読む楽しみは、梅原猛が謡曲の『隅田川』を紹介した文章で教えてくれた。謡曲はもちろん能のシナリオのようなものだから、映像的で、音楽性もあるから言葉のリズムもいい。元の話を知ると、結構面白く読める。
同時代のことを書いた『方丈記』を読み直したいところだが、ほかにも読みたいものがある。またどこか安い湯治場にでも行って積み上げた本を片端から読みまくりたい。自宅でもいいけれど、温泉というのが肝心なのだ。
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コメント
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おはようございます
私も旅行はあまり好きではありませんが(何かしらの目的、たとえば本を買うなどの目的がないと私は旅行が出来ません)やすい温泉宿で風呂につかるついでに本を大量に読みたいと言うことはあります。しかし金も機会もないので家のお風呂に温泉の素(奥飛騨温泉のものが良いですね)を入れて、書斎兼寝室で本を読みまくっているのが現状です。
そういえばあるユーチューブ(ゆる言語学ラジオ、とか言っていましたね)で老舗温泉に閉じこもって本を読みまくると言う企画がありましたが、羨ましい限りです。
では、
shinzei拝
投稿: shinzei | 2024年3月20日 (水) 09時21分
shinzei様
私も湯花などを入れてゆっくり風呂に浸かりながら本を読むのが好きです。
ただ独り暮らしで外食もしないので、三食の支度や雑用が結構煩わしく感じることもあり、安い温泉で読書だけすればいいというのが極楽なのです。
普段の洗い物で荒れた手がきれいになるのもありがたいです。
費用だけなら湯治場で過ごせば一泊五千円あまりで過ごせます。
食事は自炊も出来るし、出来合いの惣菜も売られているのでそれで済ませばそれほど贅沢というほどのことはありません。
ただし、そこまで行くのが大変ですから、一週間くらい過ごすつもりで出かけます。
投稿: OKCHAN | 2024年3月20日 (水) 09時39分
読書の途中で眠くなる時がありますが、目覚めて”風呂、また読書、そして上げ膳、据え膳・・・これを旅先で1週間ほど繰り返す・・・思えば、かなりの贅沢な時間の過ごし方です!いいですねぇ、うらやましい!
そういえば、秋田の老舗温泉場で自炊していた男性がいました。ゆったりとじぶんで食事を作る。これもまた楽しいことの一つでしょう。
投稿: おキヨ | 2024年3月20日 (水) 11時55分
おキヨ様
湯治場では、周りにうまく溶け込めるととても居心地が好いのですが、私は取っつきが悪いので、少し時間がかかります。
マイペースが貫ければ快適ですね。
投稿: OKCHAN | 2024年3月20日 (水) 12時22分