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2024年3月27日 (水)

囚われと逃亡

 『平家物語』巻の十を読了した。十二巻+灌頂記(大原御幸などが語られる)で全巻であるから、ようやく終わりに近づいた。一巻が240ページ前後で、ただし十一巻は280ページあまりと長い。最後の心臓破りの丘である。

 

 今回読み終えた第十巻では、主に平重衡(清盛の息子)と平維盛(清盛の長男である重盛の息子)の運命が詳しく語られる。重衡はすでに一ノ谷の合戦で生け捕りにされて都に送られていた。多くが討ち死にしたのに生き残ったが、重衡はすでに生死の境を超えて淡々としている。そのあと頼朝の要請によって鎌倉に送られる。その東行の旅で眺める風景がどのように彼の心に映じたのか、それが美文の中にしみじみと想像される。

 

 一方、平維盛はある意味で清盛の直系なのだが、宗盛や知盛(重衡の兄たちで、重盛の弟)が平家を率いている。前にも書いたが、重盛の係累は宗盛や知盛からやや疎んじられていたようである。もともと維盛も重衡も武士というよりも公家的で芸術肌の人間だったのだろう。平家は一ノ谷で大敗してから、四国の屋島に拠点を移している。その屋島に平家が集結する前か集結後に、維盛は戦場を離脱する。自分が残してきた家族に会いたい一心であり、一目見たら死のうと思って四国から紀州回りで都に入るが、とても家族に会える状態でないことを察してあきらめる。

 

 維盛は都から高野山に入り得度を目指す。そうして高野山で滝口入道から偈を受けて出家する。出家の目的はそもそも死ぬためでもあった。主従と滝口入道は連れだって熊野道を南下し、熊野三山を参拝したあと、那智の沖へ舟を出す。未練を残す維盛に滝口入道は引導を渡し、維盛は静かに入水する。平家物語の哀調がいよいよ高まるところである。

 

 第十一巻ではついに屋島・壇ノ浦で敗北して平家が滅び去る。滅びの中の残酷な運命が、さらに第十二巻に続いていくのである。もちろん勝利者の義経にも同様の運命が待っている。

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