『仏法僧』
『雨月物語』の中の『仏法僧』という話を読む。伊勢の人、頭を丸めて夢然と名をあらためて、末息子と二人で旅に出る。奈良の天川から山越えし、高野山にたどり着いたが、誰の紹介もないために泊めてもらうことがかなわない。宿を取るためにまた山を下りて出直すには疲れすぎていたので、御霊屋のそばの灯籠堂にこもって念仏しながら夜を明かすいうことにした。
御廟の後ろから「仏法(ぶっぱん)、仏法(ぶっぱん)」と鳴く鳥の音が聞こえる。あれが名に聞く仏法僧か、と思って昔からの仏法僧についての言い伝えや歌などを思い出し、自らも句を作ったりしていた。そこへ突然若武者が露払いしながら、武士の集団が現れる。もちろん亡霊たちである。その集団の宴席に引き出された夢然たち親子、そこで先ほどの句を披露させられ、それを上の句として武士の一人が下の句をつけたりする。そうこうしているうちに夜が明けかけて・・・。
その集団が殿と呼ぶのは誰あろう関白秀次であったという話。非業の死を遂げたものが怨霊となる。秀次もまさにその一人ということであろう。
この話の中で、仏法僧で知られる場所として、上野(こうずけ)の迦葉山(かしょうざん)、下野(しもつけ)の二荒山(ふたらさん)、山城の醍醐の峰、河内の杵長山(しながさん)、そして高野山の名があげられている。
じつは私がよく行く、長良川沿いにある洲原神社には、このような石碑が建っている。ここも仏法僧の繁殖地なのである。物語に名があげられていないのが残念である。
鳥居の向こうの山から下りてくるのではないか。この山上には洲原神社の奥宮がある。
仏法僧と名付けられている鳥は、じつは「ぶっぱん」とは鳴かない。そう鳴くのはコノハズクらしい。
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