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2024年4月11日 (木)

いくつもの日本

 赤坂憲雄『東西/南北考』(岩波新書)という本を読んだ。赤坂憲雄は民俗学者。東北文化論を考察し、東北学について研究している。私は東北で大学時代を送り、父の郷土である東北に思い入れがあるので、東北学の三部作のうち、二冊ほど読んでいろいろ考えさせてもらっている。日本民俗学といえば柳田国男という巨人がいて、そこを原点にして民俗学が展開発展してきたが、近年それを批判的に読み解き、さらなる研究によって乗り越えようという動きが民俗学の一部にあり、非常に興味深い。民俗学が閉塞状態であるという批判もあったから、喜ばしいことである。

 

 この本でもそういう研究が多数引用されていて、もちろん著者もその急先鋒のひとりでもある。だからといって柳田国男を否定するわけではなく、柳田国男の呪縛から民俗学を解放し、乗り越えなければ民俗学の未来はないと思っているだけで、高く敬意を表していることは柳田国男の著作や研究からの引用も多数取り上げられていることもわかる。

 

 柳田国男は『ひとつの日本』という捉え方から各地域の民族文化の差異の、その源流にある共通性を推察し、提示して見せた。赤坂憲雄は、その共通性というのはある時代以降の共通性で、本当の源流の多様性を語ろうとする。「ひとつの日本」は柳田国男の創り出した幻想で、じつは「いくつもの日本」があるのだということを多数の研究を示して提唱する。

 

 全く相反する主張に見えながら、じつはもっと根源的な視点に立てば、両方ともなるほどと納得できるものではないかと読みながら思った。そのことはたぶん著者も承知のことであろう。この本の中では菅江真澄の残した資料なども取り上げて論じられていて、読みながらなんだかわくわくした。民俗学に多少とも興味がある人なら、すでに承知していることとは異なる主張に反発せずに丁寧に読んでみて欲しい。新しい視点を教示される喜びを知ると思う。

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