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2024年4月23日 (火)

時代を見る

 宮崎市定が『遊心譜』の冒頭で、京都大学時代に師事した矢野仁一博士の長寿を言祝ぎ、数え年の九十五歳で論文を書いたことを賞賛している。そういう宮崎市定も1901年生まれで没年が1995年だから長命であった。しかも晩年まで著作を残してくれて、それを楽しめることはありがたい。

 

 続く小文は『わけの分らぬ文化革命』と題したもので、一部を抜粋して引用する。

 

 1960年代、中国全土を席捲して毛沢東の文化大革命華やかなりし頃、何の関係もない筈の日本言論界までが、物の怪にとりつかれたように心酔して熱烈な声援を送り、一人の反対も許さぬような雷同的風潮を造り出したのは、甚だ異様であった。さらに異様だったのは、一流と言われる中国通ほどその見通しを誤り、重大な過失を犯して自他を傷つける残念な結果を残したことである。この間にあって殆ど只一人、敢然として文化大革命の真意を疑い、雑誌『共産圏』に、「わけの分からぬ中共文化革命」なる三十頁の大論文を寄稿して、それがいつもの権力闘争に外ならぬことを看破されたのは、なんと当時数えの九十八歳、矢野仁一老博士であった。実に胸のすくような快挙であったが、惜しむらくは若輩の知識人の蒙を啓くことが出来ず、誰もこれに呼応する者がなかった。 それから二十年、博士の洞察が誤っていなかったことが、事実によって証明された。
(小略)
 そもそも歴史家とは、長い目を以て社会の変遷を追跡する任を荷なうものであるが、その長い目とは、単なる理論ではなく、実際の長期に亘る体験によって錬磨されねばならぬ。
(後略)

 

 このあと矢野博士の経歴が簡略に紹介されている。

 

 矢野博士だけが文化大革命の本質を見抜いていたかどうかは別にして、その時代の浮かれたような、文化大革命賛美の空気を私は高校生時代に朝日新聞を通してよく記憶している。そうしてその賛美する事例に首をかしげることがしばしばで、そのあと文化大革命とは何だったのかを様々な本を読んで考えてきた。文化大革命について、そして共産党中国について、そして朝日新聞を筆頭とした日本のマスコミというものがどういうものか、いろいろ教えられた気がする。それによって本物の、時代を見る目の持ち主の考察にいくつか出会うことが出来た。

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