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2024年4月 1日 (月)

『平家物語』読了

 『平家物語』をようやく読了した。私の読んだ、覚一本をもとにして杉本圭三郎が全訳注した講談社学術文庫版では、全部で3000ページ弱もある。本文、現代語訳、語釈、そして関連資料の引用を含む解説文が数ページずつ繰り返されていく。ただ物語を楽しむのなら、現代語訳だけを拾っていけば楽に読める。解説の引用文は語釈もふりがなも書き下し文もない原文のままだから、読むのに苦労するが、慣れればなんとかわかる。この解説が物語世界を理解するためには最も重要といえる。『平家物語』にはいろいろな異本があるので、それらも比較して違いが示されている。覚一本は比較的に後にまとめられたもので、文学性が高いようだ。

 

 そういえば、昨年見たアニメ映画『犬王』には琵琶法師が出てくる。冒頭が、三種の神器のうちの、壇浦で失われた宝剣、草薙剣にまつわる話であった。そして能の守旧派と革新派の争い、そして『平家物語』の語りの伝承に固執する主流派と変革していこうとする革新派との争いが描かれていた。南北朝から戦国にかけての室町時代の話であった。

 

 この覚一本はその時代の覚一検校が書き残させたものをもとにした『平家物語』である。その頃に書かれた吉田兼好の『徒然草』の第二百二十六段には、後鳥羽上皇の時代に信濃前司(しなののぜんじ)行長という人物が平家物語を作ったとある。

 

「この行長入道、生仏(しょうぶつ・人名)といひける盲目に教へて語らせけり。さて、山門(延暦寺のこと)のことを、ことにゆゆしく書けり。九郎判官のことはくはしく知りて書き載せたり。蒲冠者(かばのかんじゃ・源範頼のこと)の事は、よく知らざるけるにや、多くのことどもを記しもらせり。武士の事・弓馬のわざは、生仏、東国のものにて、武士に問ひ聞きて書かせけり。かの生仏が生まれつきの声を、いまの琵琶法師は学びたるなり。」

 

 この『徒然草』の文章が事実であるかどうかは論議のあるところらしいが、ひとつの伝聞記録ではある。すでに鎌倉時代から語り物としての『平家』はあったようで、文章としては『源平盛衰記』のようなものも盛んに読まれていた。こうして様々なものが『平家』の語りに取り込まれていき、次第に完成されていったのが『平家物語』なのだろう。

 

 夢中で読み進めているうちに、『平家物語』の文章のリズムになじみすぎてしまい、ほかの本を読むとテンポが違って読みにくくて困っている。それほどのめり込んだのは久しぶりであった。

 

 たまたま現代文解釈の参考書に小林秀雄の『考えるヒント』の中の『平家物語』に関する評論が問題文に使われていて、「『平家物語』は折にふれて読む、」などと書かれていた。折にふれて読むほどなじむというのもすごいことだと思う。そこには、『平家物語』を名文というけれど、そうともいえるけれども違うともいえる、として、これは語りとしての名文であろうという。全く同感である。真剣に読めば誰でもそう思うに違いない。だから私のような粗雑な読み手にも、そのリズムに影響されるということが起きるのだろう。

 

 つぎは読みかけの『雨月物語』の残り(あと四話)を読了し、『方丈記』を再読しようと思う。『方丈記』はまさに『平家物語』と同時代の随筆である。以前読んだときは何も考えずに読んだが、『平家物語』を意識して読み直そうと思う。並行して『醒睡笑』を少しずつ読み進めるつもりだ。これは一話ずつ楽しんで読むものなので、年内に読み終えればいい。

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