« 遅れてきた者は | トップページ | 非常ベル »

2024年4月17日 (水)

お前のいる場所

 森本哲郎の『ことばへの旅』全五巻を読み終えた。読むのが何度目になるのかわからないくらい何度も読んでいるが、あまりにも読みやすい本なので、つい読み飛ばしてしまい、読みながら考えることを忘れてしまう。本当は区切りごとに本を閉じて、著者と一緒にもう少し考えて読むべき本なのだ。

 

 第五巻のなかにイソップの寓話が紹介されている。

 

 安全な高い場所にいる山羊が、その下を通ったオオカミに悪口をさんざんあびせました。すると、狼はこう言いました。
「そんなふうにオレの悪口を言っているのはお前じゃない。お前のいる場所だ」

 

 これは第五巻のなかの『身のほどについて』という章にあって、著者はこの話の紹介に続けて、

 

 この話に具体的な教訓をつけるならば、私たちは、ともすると自分の属している組織にものを言わせていないか、ということになるでしょう。組織人とも言われる現代人は、とかく組織の中の自分を本来の自分と錯覚しがちです。そして、組織に組み込まれた役割としての人間になりきってしまい、そのあげく、人間としての役割を忘れてしまうのです。だから、いよいよ自分がわからなくなってしまう。いや、ひとごとではありません。長いあいだ新聞記者をやってきた私自身、自分がこのような山羊だったのではないかと気づいて、思わず顔を赤らめます。

 

 森本哲郎は朝日新聞の学芸部の記者であり、編集委員を務めたあと独立して評論家になった。評論家というよりも、梅原猛のような思想家だったと私は考えている。

 

 身の程を知るという。身分をわきまえろ、という意味にとられることも多いが、自分自身を知ること、そこから自分のことばで考え、自分のことばを語ることであると著者は言っているようであり、それに私も賛同する。

 

 この文章が書かれたのは昭和五十年代の初めなので、組織と個人がこのように不即不離のところがあった気がする。しかし現代はずいぶんものの考え方は変わっている。だから未だにそのことに気がついていない長谷川某代議士のように、「お前のいる場所」からものを言う人間の愚かさが際立つのだろう。

« 遅れてきた者は | トップページ | 非常ベル »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 遅れてきた者は | トップページ | 非常ベル »

2024年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

カテゴリー

  • アニメ・コミック
  • ウェブログ・ココログ関連
  • グルメ・クッキング
  • スポーツ
  • ニュース
  • パソコン・インターネット
  • 住まい・インテリア
  • 心と体
  • 携帯・デジカメ
  • 文化・芸術
  • 旅行・地域
  • 日記・コラム・つぶやき
  • 映画・テレビ
  • 書籍・雑誌
  • 経済・政治・国際
  • 芸能・アイドル
  • 趣味
  • 音楽
無料ブログはココログ
フォト

ウェブページ