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2024年4月24日 (水)

同じ本が

 手持ちに何冊か同じ本がある。持っていることを忘れて買った本もあるが、別に理由があって二冊あるものもある。自宅で何度も読み、実家でも読むために両方に置いていたものと、父に読んでもらうために買ったものだ。父は読書家と言うほどではないが、中国関係で読みやすい本を選んで渡すと時間をかけて楽しんで読んでくれた。それらを、弟が実家を改築したときに引き上げたのだ。その一冊に『考史遊記』(岩波文庫)という本がある。著者は明治の東洋史学の創始者の一人である桑原隲蔵(じつぞう)、京都大学名誉教授でフランス文学者の桑原武夫の父君である。

 

 その『考史遊記』は、明治末に必ずしも身体強健ではなかった桑原隲蔵博士が、長髪族の乱(太平天国の乱)のあとの荒廃した中国各地の史跡を苦労して訪ね歩いたときの紀行文である。少し厚い本だが、著者自身が撮影した写真が豊富に収められているのでそれを見るのが楽しい。最初は歯ごたえがあるが、読み進むにつれて読み慣れてくると夢中で読める本である。尋ね当てた歴史で有名な史跡の惨憺たるありさまの記述には様々な感慨を覚える。

 

 宮崎市定の『遊心譜』を読んでいたら『桑原史学』という小文があって、その桑原隲蔵の功績をたたえ、中でも『蒲寿庚の事蹟』という論文は世界の中国研究者に高く評価されたことを記している。この研究は宋代の蒲寿庚というアラブ系の人物が、貿易管理官としてどういう仕事をしていてその時代の経済、海外と中国との関係、当時の中国の文化などがどういうものだったのかを著したものだ。愛読書の『考史遊記』の著者の本なので、たまたま東洋文庫に収められていることを知り、大分前に手に入れたのだが、私の知識では簡単に読み解けるものではなかった。何度も挑戦しながら通読できずにいる。

 

 東洋文庫版では解説を書いているのは宮崎市定である。今回、宮崎市定の小文を読んで、もう一度チャレンジしてみようかと思って本棚から下ろして座右に置いた。

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コメント

宮崎市定の著作に初めて出会ったのは『科挙』でした。
一般向けに書かれたものですが、とにかく面白かったというのが読後感です。
訳述ですが『鹿洲公案』も忘れがたいですね。

ss4910様
私は『アジア史概説』という本が最も面白いし、ためになりました。
東西交流というものの意味が壮大なスケールで論じられていて、大きく影響を受けました。
読んでいなければ、お勧めです。
中公文庫にあるはずです。

おはようございます
宮崎市定といえば岩波新書の『雍正帝』が有名ですね。これは中公文庫にも入っているそうですが、岩波版はとっくの昔に絶版になった所謂”幻の本”です。
是非お目にかかりたいものです。
では、
shinzei拝

shinzei様
私の本棚には宮崎市定の本が七冊ほど列んでいますが『雍正帝』はありませんね。
買って読んだような気もするのですが、記憶違いのようです。

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