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2024年5月19日 (日)

白ウサギか素ウサギか

 読みかけの本がいろいろあるのに、本棚にある梅原猛の一冊の本に呼ばれて『精神の発見』というその本を新たに読み始めた。昭和四十四年前後に新聞に連載していたものをまとめたもので、訳あって立命館大学を辞めて思索に没頭し、後に独特の梅原史観を確立するまでの過程をたどるような随筆集となっている。ベストセラーとなった『隠された十字架』という本が私と彼の本との最初の出会いだったが、思い込みと推論とが豪腕によって展開するその論にいささか反発を感じながらも、面白さにぐいぐいと引かれてしまった。その後ずいぶんたくさん彼の本を読んだが、それを話し始めると切りがない。

 

 その本を読んでいたら、因幡の白ウサギに関する彼の考察が書かれていて、白兎神社を訪ねたばかりだから興味深く読んだ。これを読め、とこの本が私を呼んだのだ。ここで改めて梅原猛が要約したシロウサギ伝説について以下に引用する。ところでシロウサギについて表記がいろいろ違う書き方にしているのは、じつは理由があって、いい加減に使っているつもりではないことを念のためおことわりしておく。

 

 オキノ島にいたシロウサギが、この地に渡ろうとする。そこで、ワニをあざむいて、お前の仲間と俺の仲間と、どちらが多いか、比べあいをしようという。ワニが承知したので、ウサギは、この島から稲羽(いなば)の気多前(けたのさき)までならんだワニの背中の上を渡った。ところが、降りようとするときにウサギは、俺はお前を欺いたという。ワニは怒って、ウサギの衣服を剥いだ。ウサギが困って泣いていると、八十神命(やそがみのみこと)が通る。相談すると、海の水をあびて風にあたるとよいといわれた。その通りにしてみると、身は傷(そこな)われた。そこに、オオナムチ、すなわちオオクニヌシノミコトが袋を背負ってやってきて、事情を話すと、いますぐにこの水門(みなと)のところへ行き、そこで真水で体を洗って、ガマのホをしいてその上へ寝よという。ウサギは、その通りにしたら、膚はもとのままになった・・・。

 

 ここでオキノ島というのは隠岐の島であるというのが通説である。しかし、それは沖ノ島ではないか、というのが梅原猛の仮説である。実際に彼は沖ノ島を訪れている。沖ノ島は対馬と九州や山口県との間にある小さな島で、大昔は人も定住していたが、いまは無人島である。そこには宗像神社があり、この島は神域であって神事の際に限られた人しか上陸することが出来ない。女人禁制である。

 

 この島への上陸に際しては、禊ぎをしなければならない。まず丸裸になって海水に入り、禊ぎをして、そのあと真水を体に注ぐ。梅原猛ももちろん禊ぎを体験する。シロウサギと同じではないか。

 

 古事記には「此れ稲羽の素莵(しろうさぎ)なり。今者(いま)に莵神と謂ふ」という文章があるという。イナバノシロウサギは神様であること、そして白いウサギではなく、素とは裸の意ではないかと本居宣長が考察していたことなどが述べられていく。また、日本書紀には沖ノ島など宗像三島を「宇佐島(うさのしま)」と名付けていることなどに着目する。

 

 さらにワニとは阿曇(あずみ)氏のことであろうと推論する(根拠はあるが省く)。宗像一族と阿曇一族との日本上陸をめぐる争いが仮託されているのではないかという驚くべき推論を展開していくのである。阿曇氏については司馬遼太郎が様々に言及してなじみのことであるが、こういう出会いになるとは思わなかった。

 

 ここからさらに梅原猛は出雲神話そのものについて様々な推論を展開していく。大変面白い。

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