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2024年5月20日 (月)

『ロストケア』

 映画『ロストケア』(2023年日本)を見た。冒頭に独居老人が孤独死して、二ヶ月以上発見されずにいた凄惨な現場を見つめる女性(長澤まさみ)の姿がプロローグになっている。やがて彼女が女性検事であることが分かる。微犯を繰り返し、刑務所が自分にとっては天国だ、とうそぶく老女とのやりとりに、会話の成立しないどん底に生きる人間とのその世界観の違いの大きさを感じさせるのだが、その老女を演じているのは・・・まさかと思ったら、エンドクレジットを見たらやはり綾戸智恵であった。

 

 並行してケアセンターで働く人たちの日常が描かれていく。介護に疲れ果てていく家族の支えとなって介護老人の世話をする彼らの姿が明るく描かれ、率先して働く青年・斯波(松山ケンイチ)を、新人の介護士は憧れの目で見ている。様々な介護の実態、そしてそれが終わるのは介護されている老人が死ぬまで延々と続くものであることもいやでも思い知らされる。

 

 そんな中、介護センターのセンター長と介護老人が死体で発見される。ここから、警察の、何が起こったのかについて捜査が始められ、あの女性検事が事件の担当になる。結果的に恐るべき大量殺人事件が発覚することになる。四十二人の殺人を自白した犯人、しかし確認されたのは四十一人、もう一人はいったい誰なのか。

 

 そのもう一人の死者となる介護老人役を演じた柄本明は記憶に残る名演である。しかも口が不自由で語ることばが聞き取りにくい役を演じながら、そのことばが耳の聞こえにくい私にも聞き取れることの素晴らしさ。それはそう意識して台詞を語らなければ出来ないことで、そのことに感嘆した。

 

 少し冗漫な長さになったように感じ始めたラストに、プロローグの意味が明らかにされる。おぼろげに想像はしていたが、衝撃的である。

 

 見えるものと見えないものがある、見えないのは見ようとしないからだ、という惹句が強烈に胸に響く。殺人は、死は救いか。

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