内と外
いま、赤坂憲雄『境界の発生』(講談社学術文庫)という本を読み進めている。書かれていることの意味を理解して納得するのに時間がかかるので少しずつしか読めていないが、世界観が少し変わるほどの影響を受けている。今まで見えていなかったものを見て感じることが出来るかもしれないと思う。
今はうまく説明できないが、坂が境、橋が端と同義でもあるということがなんとなく理解できた。黄泉平坂(よもつひらさか)はこの世とあの世の境であるが、境が坂であることの象徴的な例だろう。また橋姫伝説を鬼との関連で論じた論文もある。ここで内と外の境が空間として接しているとして、それは面的な接し方でも線的な接し方でもなく、坂や橋などの、ある点をもって境界としているということが新しい知識となった。
そういえば西洋では異界との境目を十字路に置く、ということを以前何かで読んだことがある。この本にもそのことが言及されている。ガブリエル・バーン主演の『ミラーズクロッシング』という映画は好きな映画であるが、その題名に暗示されている象徴的な意味をずっと考えていたので、少し疑問が解けた気がした。これも十字路の交差点というポイントである。
この本には琵琶法師についても論考がなされていて、それを読みながら『犬王』というアニメ映画の物語の意味が一気に見えた気もしている。もしかしたらこの赤坂憲雄の論文か、または彼が引用しているような本がこの映画の下地にあるのではないかと思う。ないはずがないと思う。
世界は見えているものだけで成り立っていない。むかしは見えていたものが今は見えなくなっている。それだけうすっぺらになっている気がする。
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