紀行文(1)
いわゆる紀行文といわれるジャンルがあって、紀行文とは旅に出て、その旅先でのことを記した本のことかと思う。いわゆる観光ガイドと違うのは、その旅先での記録が、主に個人的な感慨を記しているということだろう。私はそういう紀行文が好きであるが、私の考える紀行文は、一般的な紀行文より少し範囲が広いかもしれない。
紀行文には、ただ目の前に見えている景色を描写しただけのものもないではないが、それでは写真と何ら変わらず、やはりそこに時間の厚みのようなもの、そしてそこに自分の思いを重ねた、時間と空間の厚みを感じさせるものが優れた紀行文だと思うし、そういうものが読んでも印象に残る。
本棚を眺め回すと、思った以上に紀行文の本が多い。作家の全集でも、その中に紀行文を含んでいるものが少なからずあるのは、誰でも旅をするからで、優れた作家の目の視力というのは常人を遙かに超えていることが多く、読み応えがあるものだ。思えば歴史を記した本を読むのも、ある意味で時空を超えた時間旅行ということも出来て、それに対する思いを記したものも、ものによっては紀行文になることもある、というのが私の紀行文についての考えである。
一度整理したいと思っていたので、何回かに分けて、その紀行文について取り上げていこうと思う。
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