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2024年6月18日 (火)

『妄想を見る女』

 トマス・ハーディ(1940-1928 イギリスの小説家・詩人)の短編小説『妄想を見る女』を読んだ。新潮社版の世界文学全集・第四十五巻、イギリス作家作品集の中に収められている。この本にはスウィフトの『ガリヴァ旅行記』やスティーヴンソンの『ジーキル博士とハイド氏』が収められていて、それを読むために中学校のときに買ったものだ。奥付きでは1964年発行となっている。もちろん目当ての二作はその時に読んだが、そのほかのハーディやマンスフィールドやコンラッドやハクスリィの短編はよく覚えていない。

 

 その頃から大学生までに買って読んだ本がたくさんあったが、ほとんどは転居したときに母が図書館に寄贈してしまったので、残っている本はごく一部である。先日弟の家で、残っていたこの本を見つけたので持ち帰ってきたのである。もうすぐ読み終わるシマックの『人狼原理』もその時に見つけたものだ。

 

 『妄想を見る女』は中流階級の妻の物語であるが、夫婦子供連れで避暑に出かけて借りた屋敷に滞在し、そこの一部屋を借りていたという詩人の男に対して妄想を深めていく様子が克明に描かれていく。その詩人とはついに会わずじまいであるが、ラストは冷酷である。自然主義的作風の作家ということで、そう分類されるのは分かる気がする。ハーディは何度も映画化された『テス』の原作者である。

 

 こういう短編に心動かされたりすると、世界文学も好いなあと思ったりするが、今は手を広げないように自分を抑えないと、古本屋で安い本を何冊も買って、抱えて帰ってくることになりそうだからあぶない。たぶん古い全集など、二束三文で買うことが出来るはずだ。

 

 蛇足だが、妄想を見る、という言い方は少し変だと思う。妄想する、とか妄想を抱くとか言うのが普通ではないだろうか。

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コメント

私も”妄想”はするもので”観る”はおかしいとは思いましたが、本を読めば納得できる事と思いました。
ちがうのですか?
海外の作品を翻訳した場合、時々日本語としてはおかしいと思うことが度度ありますが、もともと私はずぼらなたち。まぁいいか、でやりすごします。

おキヨ様
観る、ではなくて見る、が日本の題名です。
読んで納得できるかどうかは人によるでしょうね。
ところでむかしはハーディの短編集が文庫にあったような気がしますが、今もあるのかどうか分かりません。
名作ほど絶版になっていることが多いのが現代日本ですからね。

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