『幼年期の終わり』
アーサー・C・クラークの『幼年期の終り』(ハヤカワ文庫)を読んだ。十代の頃読んだので、このSFの古典的名作を読むのは二度目である。その時は『地球幼年期の終わり』という題名だったような気がする。初めての時はずいぶん衝撃を受けた記憶があるが、内容はほとんど忘れかけていた。なるほど、ここまでのことが書かれていたのか、とあらためて思った。ちなみに、クラークはあの『2001年宇宙の旅』の原作者である。
人類が宇宙へ飛躍しようとするまさにその時に、圧倒的に科学の進んだ異星人が地球にやってくる。間接統治の形で、地球を戦争のない、国という枠組みすらない豊かで平和な世界に変えていく。彼らの目的は何か。
彼らがやってきて五十年、人類がこのまま安楽で過ぎていくことでいいのか、という人たちの集まるコロニーが作られている。子供たちとそこに暮らす家族を通して異星人たちの目的が明らかになっていく。衝撃的な出来事が起きるが、それは静かに受け入れられていく。それは人類の終焉ということである。
ある冒険的な行為の末に、最後の人類となる宿命を持たされ男は、人類の終焉を静かに見送る。
この物語を通して人間が見ている世界、宇宙というものとは全く違うものが見えてくる。初めて読んだときに、そのことが衝撃的だったのだということを思い出した。ところで地球上の生命は人間だけではないのだということも作者に言いたい気がした。
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