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2024年6月11日 (火)

『境界の発生』

 赤坂憲雄『境界の発生』(講談社学術文庫)は民俗学の論文をいくつか集めたものなので、その知識が不十分な私には歯ごたえがきついところがあったが、民俗学のかなり重要なポイントについて書かれているのでいろいろ考えさせてくれる本だった。境と坂との関係、「杖」というものの深い意味は、すでに柳田国男や折口信夫によって深く考察されていたことでもあり、独創ではないことが却ってその考察を深めたものになっているようだ。

 

 内と外、生者と死者、この世とあの世、あちらとこちらという、その境目についての認識は古代の人たちにとってはとても重要なことであった。それに対して、近代では自分という枠とその外部、家族という枠、地域社会という枠、国家という枠が同心円状に認識されていたのではないか。そして現代はその強固な枠は自分と自分以外という枠しか存在しなくなってしまったのではないか。外部は同心円ではなく、宙に浮かぶシャボン玉のようにさまざまなものがてんでんに存在しているのではないか。

 

 もちろんこの本にはそんなことは書いていないが、そもそも近代までは個人という概念は希薄で、集落という集団生活の枠そのものが基本的な内部で、その外が外部だったのだと思う。個人という概念が確立したとき、境界というものがどうなっていったのか。境界が個人というものの外側に強固に確立し、そして共同体の枠が次第におぼろげになって、不確かなものになってしまったのではないか。

 

 赤坂憲雄はこれらの考察以後、さらにそれを進化させることなく、「東北学」という民俗学の新しい分野を切り開き、柳田国男民族学を批判的に発展させていった。民俗学は面白い。

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