紀行文(12)
私が私淑している森本哲郎には紀行文がたくさんある。森本哲郎は元朝日新聞の記者だが、その時代に世界中を歩き回り、さらに独立してからも歩き回った。彼の本はたくさんあるが、手に入れられる限り集めたので、その八割くらいは手許にある。彼の本は『・・・の旅』という題名のものが多い。旅先で思索したことを、風景、歴史、関連するさまざまなことを関係づけながら優しく記述している。どの本も、何度読んでも啓発される。
彼の紀行文を一冊だけあげろ、といわれたら、『サハラ幻想行』という本だろうか。タッシリ・ナジェールを訪ねる旅である。この本で何度森本哲郎とともにサハラを歩いたことか。哲学を学ぶことの意味とその世界を教えられたのも森本哲郎だったし、二十代の時に挫折しかかった自分を立ち直らせてくれたのも森本哲郎である。私にとって彼は人生の師であり、先達である。
ほかに紀行文としていくつか書名だけあげるとしたら、『そして---ぼくは迷宮へ行った』、『おくのほそ道行』、『旅の半空』あたりか。ほとんど彼の本は旅の話だから、あげていけば全てが紀行文ともいえる。私が救われたのは『生きがいへの旅』という本である。
*私淑 尊敬する人に直接には教えを受けられないが、その人を模範として慕い、学ぶこと(岩波国語辞典)。
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