欲望が強いとだまされる
欲望が強いとだまされる、なんてあたりまえだと思うだろう。何でそんなあたりまえのことをいうのか。
世の中には欲望の強い人と、それほどでもない人とがいて、それとは別に、欲望を抑える力の強い人と、抑える力の弱い人とがいる。世の中でのし上がるには、つまりのし上がって財産を作れる人というのは、欲望が強くて、しかもそれを押さえ込む力も強い人である。欲望が強くてそれを抑えられない人は、その欲望に振り回されて身を滅ぼすことが多いから成功しない。もちろん詐欺師がカモにするのに一番楽なのはそういう人だが、楽な分だけたいした大きな成果を上げにくい。
世の中には、自分は絶対にだまされない、と自負を持つ人がいて、そういう人はしばしば自分の抑制する力に自信を持っているからそういうことを言う。詐欺師にとって腕の見せ所である。抑制された強い欲望の出口をうまく作れれば、もともと欲望が強いから、そこの堤防が破綻して、抑制は一気に崩壊する。自負を持つほどだましやすい、などと詐欺師がうそぶくのは、それをよく知っているからだろう。
私が密かに笑うのは、そういう大物ではなくて、誰かが得をしていて自分がそれにあやかれないことに激しく嫉妬する人である。自分が損をしている、と勝手に思い込んでいる人である。しばしばそういう人は「自分の権利」などという。そういう人はコロリとだまされる。自分で勝手に転ぶ人を見て笑うのは悪趣味だが、人というのは転んだ人、つまずいた人を見て笑うものであって、それは健康な笑いといっていい。
自分のプライドが傷つくほどでさえなければ、多少損してもいいやと思えるくらいだと、転ぶことはあまりない。そう思って生きている。
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