『ヒンターランド』
第一次世界大戦が終わってしばらくしての、オーストリア、ウィーンが舞台のダークミステリー映画『ヒンターランド』(2021年オーストリア・ルクセンブルグ)を見た。従軍し、ソビエトに抑留されて過酷な捕虜生活を送ってようやく帰国した、元刑事のペルクという男が主人公。第一次世界大戦中にロシアはソビエト革命でソビエト連邦という共産国となっており、その捕虜生活が残虐を極めていたことがこのミステリーの背景にある。オーストリア帝国は戦争により崩壊し、小さな国として荒廃からの復興の途上にあった。
この映画の見所は、そのダークな映像と、しかもゆがんだ背景である。背景の建物や空間は奇妙にゆがんでいる。まるで書き割りの前で演じられる舞台のようである。ペルクの思うウィーンはこうして暗くゆがんだ風景として目に映っているのだろう。この映像手法は素晴らしい効果をもたらしていると思う。
殺人事件が発生し、その被害者がともに復員してきた仲間で、ペルクの住所が書き込まれたメモをもっていたことからペルクが疑われる。警察に連行されたペルリは元同僚が警視になっていることを知る。彼のおかげで疑いは晴れ、ペルクも捜査の手伝いをすることになる。そして第二の事件が起き、それが連続殺人であることがわかってくる。そしてペルクも襲われる。辛くも助けられるが、すでに第三の殺人が行われていた。殺害方法、そして残された暗示から、ペルクは犯人の動機をつかむと自ら捜査を進め、やがて予想を超えた真犯人にたどりつく。
見応えのある映画で、残酷な殺害方法がじつはソビエトでの捕虜の拷問に準じていることなど、ペルクしか知り得ない背景があってこのミステリーは成立している。時代設定とウィーンという舞台は必然なのだ。見応え在り。
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